PR

 金融、災害、犯罪、戦争、そして感染症にコンピュータ・ウィルスと、メディアが発達したせいか、最近、人々の危機意識が必要以上に刺激されているようだ。

 平均寿命は、医療水準の向上で、この50年間で20年くらいは延びたのだし、仕事の効率性だって、コンピュータの演算速度だって何倍も増して、センシング技術は目に見えない交通渋滞を回避できるくらいにまで高度化している。日本人の危機を乗り越える力は、情報技術の高度化によって格段に高くなっている。でも、寿命が延びて幸せな時間が増えるのならよいのだけれど、乗り越えなきゃならない危機の数が増えてしまうのでは、せっかくの長寿社会を喜べない。

 2008年10月から始まったドラマ「ブラッディ・マンデイ」は、人気の少年漫画をドラマ化した作品だ※1。このドラマには、テロ組織によってまかれたウィルスでたくさんの人が血を流して死んでゆくシーンが何度も登場する。漫画や劇画での表現なら紙媒体の世界の中で、「ダーク」という接頭語は付くけれど、ファンタジー的な想像性を発揮して主人公の天才ぶりを楽しめる。けれども、ドラマになったそれは小さな女の子が鼻から口から血を流して倒れる姿が生々しく映し出され、それに引き続いて大量殺戮シーンが何度も繰り返される。

 その番組のホームページにはプロデューサーの危険な描写に対するコメントとして「『土8(土曜の夜8時)』枠で許される限りのことを、お叱りを受けない程度に忠実に描いていけたらと思います(笑)。」とある。「(笑)」の意味はわからないけれど、テロ組織の悪質さを映像化するなら他の表現方法もたくさんあると思う。

 このドラマで極悪のテロ組織に立ち向かう主人公は、天才ハッカーだというクールな男子高校生である。天才ハッカーというと恰幅のよい髭面に長髪というリチャード・ストールマンを思い描いてしまう世代なので、クールな美少年がハッカーというのは、これまた違和感がある。けれども、ハッカーがコンピュータに侵入する悪役から正義の側に戻ってきたことは喜びたい。ハッカーはもともとはネットワークを知り尽くして要領よく仕事をこなす人々を称えた呼び名である。

 世界を巻き込む金融危機は何千兆円の損失、都市を襲う大規模災害は何千人の死者、恐ろしい危機情報が、映像とともにお茶の間で身近にしかも頻繁に伝えられる。インターネットでは、それらの情報に触れた人々の反応が手に取るようにわかる。9.11のようなテロが現実に起こり、その映像が何度も繰り返して放映される。だから、ブラッディ・マンデイのようなドラマが現実味を帯びてしまうのも無理はない。

 メディアにあふれる危機情報で人々の不安は高まるわけだが、ドラマの中でその不安の解消に取り組むのは、天賦の才を備えた高校生なのである。殺人シーンのリアルさに比べて、主人公はあまりにリアルじゃない。なんだか頼れる人のいない現代の世相を反映しているようで悲しい。

 格好はあまりよくなくって、天才でもクールでもないけれど、困っている人たちのために小さな努力を惜しまない秀才が主人公ならグッとリアルだし、その主人公が苦労に苦労を重ねて地域社会の孤独な人々を危機から救うドラマなら、不安の多い社会ではグッとドラマチックだ。

 そんな秀才を目指すなら、きっと明るい月曜日が迎えられる。ブライト・マンデイで行こう!

【注】

※1 このドラマは、TBS系列で2008年10月11日(土)の7時56分から放映されています。原作は『恵広史、龍門諒「BLOODY MONDAY」講談社、2007年』です。このドラマもそうですが、他にも映画やドラマになった『大場つぐみ、小畑健「DEATH NOTE デスノート」集英社、2004年』など、ダーク・ファンタジーと呼ばれる分野の漫画や劇画が流行っているようです。僕は子供の頃には、水木しげるさんの「ゲゲゲの鬼太郎」でもちょっと怖がるくらいの臆病者でした。今でもホラー映画は苦手なので、血の流れるシーンをちょっと気にし過ぎるのかもしれませんが…。【本文に戻る】