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 ジェリー・ヤンとスティーブ・ジョブズは、いったい何が違っていたのか。

 ヤンがとうとうヤフーのCEOを辞任することになったというショッキングなニュースを耳にして、シリコンバレーの人々はまるでわがことのように自省の気持ちでこのふたりを比べている。

 ジェリー・ヤンとスティーブ・ジョブズには共通点が多い。共にユニークな技術とビジョンで企業を創設し、それを世界的な存在にまで押し上げた。それだけではない。創設者としての立場を追われて何年も経ったのちに再度その企業を率いるという、「二度目のチャンス」を与えられたところも同じだ。

 それなのに、ジョブズはアップルをここまで育て上げて来た一方で、ヤンはどうしてそれが達成できなかったのか。シリコンバレーという泥沼ビジネスの戦場では、トップの資質こそ企業の将来を左右する。だからこのふたりを比較分析するのは、とても大切なことなのである。

 そうした分析のいくつかをご紹介しよう。

分析その1: ジェリー・ヤンは性格が良すぎた。

 ヤンがエンジニアたちに好かれる、人のいいタイプであることは有名だ。大学生の時に興した企業がどんどん成長しても、お気楽でアンチ大企業的なスタンスがヤフー的文化を形成してきた。だが、そのいい性格が、苦境に陥ったヤフーで人員削減をし、組織を大幅に改編するといった大鉈はふるうのを邪魔した。他方のジョブズと言えば、泣く子も黙る恐怖政治家。その違いは大きい。

分析その2: ジェリー・ヤンはヤフー社外に出たことがない。

 創設して10年も経たないうちにわが子のように愛するアップルを追われたジョブズは、ネクスト・コンピュータを創設し、ルーカス・フィルムの一部門を買い取ってピクサー・アニメーションを興した。アップルに舞い戻るまでの10年以上、ジョブズはアップルの外で試行錯誤を繰り返しながら、虎視眈々と次のチャンスをうかがい、爪を磨いていたのだ。一方のヤンは、ずっとヤフー内で純粋培養。経験の量も悔しさの度合いもまったく違っている。二度目のチャンスを与えられた際に、この違いが瞬発力を生むかどうかを分けた。

分析その3: ジェリー・ヤンはヤフーの栄光を愛しすぎた。

 ヤンには、ヤフーがもっとも輝いていた時期の印象が刻印されていて、そこから逃れることができなかった。マイクロソフトがたびたび買収話を持ちかけてきても、栄光の残光に惑わされてそのチャンスを見抜けなかった。他方、ジョブズはアップルで再びCEOになった際にはそれまでの製品群を変え、今でもひっきりなしにビジネス・モデルを刷新し続けている。

分析その4: ジェリー・ヤンはヤフーの強みをうまく言葉にすることができなかった。

 口八丁手八丁に多少の誇張も交えて製品をプレゼンテーションする技にたけたジョブズと比べて、ヤンはあまりに謙虚すぎた。考えてみれば、危ういとは言え、多くのユーザー数などヤフーにはまだまだ強みがある。どうしてそれをもっとアピールしなかったのか。

 さて、これからヤフーはどうなるのか。今のところ、何も見えないというのが正直なところだろう。グーグルとの広告技術提携話までお流れになってしまい、今のヤフーは世の中にすっかり取り残された陸の孤島のようである。そこに不景気の暗雲まで立ちこめている。マイクロソフトが、再び買収話を手に戻ってくるだろうという説がある一方で、いや、マイクロソフトはヤフーのことなどすっかり忘れて、さっさと自分の道を歩んでいるという説もあり、どちらも頷けるところである。

 いずれにせよ、ジェリー・ヤンは以前のように「チーフ・ヤフー」職に戻って、ヤフーの今後を見守ることになる。シリコンバレーはまたもや緊張状態に立ち返った。