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 先だって、「ネットいじめ」についてある判決が下された。これがまた、うぅむと腕を組んで考え込ませるような内容である。

 事件は次のような経緯で起こった。

 ミズーリ州のある町に住む13歳のミーガン・マイヤーは、SNS(ソーシャルネットワーク・サービス)のマイスペースで友達といつも交流している少女だった。大好きなピンクづくしのサイトを作り、バレーボールが好きで、チワワ犬についてはちょっと詳しい。

 そのマイスペースでミーガンに近寄ってきたのが、ジョッシュ・エヴァンズという少年。ジョッシュは、最近町に引っ越して来たちょっとカッコイイ男の子みたいだ。ミーガンとジョッシュはマイスペース上で仲良くなり、何週間もやり取りをしていた。

 ところが2007年10月頃、ミーガンの様子がおかしくなる。ジョッシュからこんなメッセージが届いたのだ。「君なんかいない方が世界は良くなる」。ミーガンはそれまでも自殺願望があり、抗うつ剤を飲んでいたが、その後しばらくして自室で首を吊って自殺をしてしまったのだ。

 事件が意外な展開を見せたのはほぼ1年後、ジョッシュ・エヴァンズという少年など実在しないことがわかってからだった。ジョッシュを名乗っていたのは、実は近所に住むローリ・ドリューという主婦。ドリューの娘サラはミーガンの友達だが、ミーガンがサラの悪口を言いふらしているらしいと知って、架空の少年になりすまし、ミーガンに近寄った上で精神的な打撃を与えたのである。ミーガンはドリュー家に泊まりに来たこともあり、彼女が抗うつ剤を飲んでいることも知っての上だった。

 さて、問題はここからだ。

 ミズーリ州での裁判は無罪に終わった後、マイスペースの拠点であるロサンゼルスに場所を移して上訴された今回の裁判では、ローリ・ドリューが正式な認可なしに偽名でコンピュータ・アカウントにアクセスしたという罪で有罪になった。最高3年の刑期と30万ドル(約3000万円)の罰金が科される。

 子供に対してそんなひどいことをしたのだから、有罪になって「当たり前だろう」と言いたいところだが、この判決についてはありとあらゆる反論が巻き起こっている。

 まず、コンピュータやインターネット法の専門家は、これは法律の過剰な解釈だと主張する。今回適用されたのは、ハッカーを取り締まるために1986年に生まれた連邦コンピュータ詐欺及び不正使用取締法だが、これをこうした事件に用いるのはやり過ぎで、今後コンピュータ・ユーザーの自由を制限するかもしれないというのだ。

 また、マイスペースには他人を名乗ってはならないという規則があり、今回の判決はそれを遵守しなかったことが理由になっている。「そうすると、今後はインターネット・サイトの運営者が、何が有罪になるかを定義することになるのか」と、半ばあきれた様子で発せられている感想も多い。

 「マイスペース側に罪はないのか」と問いかける人々もいる。小さな文字で規則さえ書いておけば、ユーザーが何をしても知らんぷりなのかと、サイトのアドミニストレーターの責任を問うているのだ。

 もちろん、今回の判決に賛成する人もいる。「人々がコンピュータ犯罪の餌食になるのを防ぐ重要なステップだ」と。

 SNSという世界一つとっても、どのようなテクノロジーを投じようと、そこで起きていることすべてを把握することは誰にもできない。さらに、現実の中での行いや悪意がサイバー世界に移ると、これがどう解釈されるべきなのかはさっぱりわからなくなる。まだまだ手探りの状態だ。

 実はこれは、アメリカ初の「インターネットいじめ」に関する判決。今後のケースの前例ともなる重要なものだ。これを機に起こる今後の議論はけっこう重要なものになるだろう。