PR

 年が明けて2009年。本年もよろしくお願いいたします。

 この原稿を書いている本日1月5日を、ワタシは「偉大なピアニストの誕生日」として記憶している。

 1920年1月5日、完全主義者として名高い鬼才、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが誕生した。さらに、1931年1月5日、知性派の大ピアニスト、アルフレート・ブレンデルが生まれた。そして、1942年1月5日、ミケランジェリにも師事した不世出の天才マウリツィオ・ポリーニがこの世に生を受けた。

 ミケランジェリ、ブレンデル、ポリーニという3人の並外れたピアニストが1月5日に産声を上げている。1月5日はピアニスト誕生の特異日なのだろうか。わが子の誕生日が1月5日であることを思い出した親御さんは、さっそく息子(娘)を音楽の道に進めたくなるかもしれない。

 しかし、早まった期待は禁物である。ここはひとつ落ち着いてよく確かめてみよう。ミケランジェリは1920年、ブレンデルは1931年、ポリーニは1942年に生まれている。すなわち、天才ピアニストは11年周期で1月5日に誕生しているのだ。帰納的に推理するならば、次に天才が生まれるのは1953年、さらに1964年、1975年、1986年、1997年、2008年のそれぞれ1月5日ということになるだろう。

 1953年や1964年生まれならばすでに世に出て活躍しているはずの年齢だ。1986年生まれとなるとその才能が世界的に発見されているかどうかは微妙なところ。1997年生まれではまだ才能が開花していないだろうが、ローカルな神童として騒がれていても不思議はない。整理してみると、こんな感じだろうか。

  • 1920年1月5日 アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ誕生
  • 1931年1月5日 アルフレート・ブレンデル誕生
  • 1942年1月5日 マウリツィオ・ポリーニ誕生
  • 1953年1月5日 今年56歳。円熟期を迎える頃だが何らかの理由で消息不明。
  • 1964年1月5日 最盛期の45歳。何が彼の行く手を阻んでいるのか。
  • 1975年1月5日 気鋭の若手として活躍中のはず。大ブレイク寸前か?
  • 1986年1月5日 21歳、音楽院学生。師匠は彼/彼女の天才を知っているはず。
  • 1997年1月5日 近所で評判の小学生。公民館で華麗にショパンを弾く神童。
  • 2008年1月5日 昨年誕生したベイビー。わが子が天才であることをママはまだ知らない。

 今のところ、ポリーニまでの3人はヨーロッパで誕生しているが、時代背景の変化を考慮すると、それ以後は世界のどこから生まれてくるのか、予断を許さない。本来なら知られているべき1953年の天才は、どこかで内戦や天災に遭ってしまったのかもしれない。でもアナトール・ウゴルスキみたいに50歳近くになってから世界的に知られるような人もいるから、決め付けるのはまだ早い。北朝鮮で活動しているために情報が届かないということだってありうる。

 1975年や1986年の天才はもう活躍しているんだけど、寡聞にしてワタシが知らないだけという可能性もある。「この人がそうなのでは?」という該当者をご存知の方はぜひ教えてください。あるいは「その天才とは私のことです!」という1月5日生まれのピアニストの方に名乗り出ていただいても結構です。