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 エレファント・ファーマシーが倒産してしまった。とても残念だ。

 「エレファント・ファーマシー」を日本で知っている人は皆無だろう。いや、アメリカでもかなり限られているはずだ。なぜなら、この薬局はベイエリア(サンフランシスコ湾岸地域)で生まれ、ここだけで展開していたからである。

 エレファント・ファーマシーが生まれたのは6年前、場所はバークレー。オーガニック薬局という売りで、薬品、化粧品、洗剤、衣服、食料、オモチャなど、あらゆるオーガニック製品を揃えていた。風邪をひいたけれど、ケミカルではなくてハーバル(薬草)で治したいとか、変な香料がついていない自然のフローラルな香りのする石けんを買いたいとか、安全な住宅用洗剤が欲しいといったような場合には、とても頼りになる店だった。

 私は特にオーガニック・フリークではないけれど、ここに行くのはけっこう楽しみだった。店で売っている商品もおもしろかったけれど、他にもいろいろ発見があったからである。

 たとえば、オーガニックなドライ・クリーニングの存在を知ったのもここだ。人体や環境に有害とされるパークロルエチレンの代わりに、リサイクル可能な液化炭酸ガスやシリコン・ベースの洗剤を使って処理をしてくれる店の紹介が、ここのチラシに載っていた。また、コンピュータなどの廃棄もここで扱っていたし、なぜか無料のヨガ・クラスもあった。

 アメリカでふつうの薬局、つまりドラッグストアーと呼ばれる店は、とても不健康な気分になる場所である。何と言っても、アメリカ人は薬好きだ。薬に対する信頼心が高いのか、ともかく薬をよく飲む。スキーで筋肉痛になり、鎮痛剤をゴボゴボと水で下す人を見たことがあるが、あんな飲み方をして大丈夫かと、見ているだけで不安になるほどだった。

 そんな習性を反映してか、ドラッグストアーにはいやというほど薬がならんでいる。睡眠薬だけでも、タップリ寝るもの、ゆっくり眠りに入るものなど、いろいろなものが何10種類もある。かゆみ止めのクリーム類も延々と並んでいる。

 薬以外にもいろいろ売っているが、これまた健康とはほど遠いものばかり。超安売りのキャンディー、ひどいつくりのオモチャ、洗浄力はすごいが身体に悪そうな住宅用洗剤などなど。

 そんな中に登場したエレファント・ファーマシーだったので、いいニッチに目をつけたものだと私は喜んでいた。一時はシリコンバレー地域にも出店して、なかなかの発展ぶりを見せていた。グリーン志向のオバマ大統領の登場で、これからはこういう店が本格的に注目されるだろうと思っていた矢先の倒産だ。

 このできごとで、グリーンやオーガニックはまだまだ採算のとれないものだということがよくわかる。エレファント・ファーマシーの商品は、ドラッグストアーで売っているものと比べると、数倍安全だが、ちょっと割高だった。経済環境がよければそれでも売れたのだろうけれど、しっかりと根付く前に打撃を受けてしまった。倒産のリリースにも、「昨今の信用収縮の影響をまともに受け、われわれのような小さな商売はやっていけなくなった」とある。

 グリーン・テクノロジーもしかり。シリコンバレーは今これですっかり沸いているが、ここで開発されるグリーン・テクノロジーが使いものになるまで、われわれが願っているよりずっと、ずっと長い時間がかかると言われている。

 新しい芽は、沈みゆく経済と必死に競争しているのだ。