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 落語家の財産は何かと問われれば、それは日々の高座の記録である。今、落語ブームなのか分からないがレコード店には落語CDが所狭しと並べてある。実は俺の「白鳥」CDも4巻並んでますから、良かったら買ってね。

 さて宣伝はさておき、商品となるCDの録音落語会は緊張して普段の力が発揮できず受けないことが多々ある。客も「私たちの笑い声が録音されるんだ。それなら、くだらない所で笑わないようにしよう」などと考え、おかしいのに唇かみしめてるだまってしまう。沈黙の落語CDとなってしまうのだ。だから笑い声が沢山入ってるCDはその落語家が並外れた実力があると言うことなのです。ちなみに俺のCDはバカ受けだよ……誇大広告はこれでおしまい。

 俺は2つ目の頃、落語の仕事がなく腐ってました。ある日、自分の落語を録音して勉強している先輩を見て「俺もやってみよう」と考え、それからできる限り自分の高座を録音した。以前このコラムで紹介したソニーのリニア録音機を買うまでは全部MDで録音しておりました。ポータブルMDに週音マイクを差して高座の脇に置いておくと、結構臨場感のあるライブが取れます。その数全部で200本以上。時間にしたら300時間以上は録音してあるはずだ。若いころの無謀な落語や池袋演芸場で全く受けず俺の声と壁にかかっている時計の音しか聞こえない幻の駄目駄目落語。最初は受けなかった新作落語が段々と受けて行って、今ではバカ受けになっている成長過程など、それこそ白鳥ファンだったら垂涎の録音資料なのだ……白鳥ファンがいたらの話だけどね。

 その莫大なMDをどうにかしようと考えた。これをパソコンに取り込んで俺のウォークマンで聞けたら、わざわざ自宅のミニコンポで再生しなくても、どこでも聞ける。また録音した場所が悪くて入ってしまった床のきしむ音などの雑音も音楽ソフトで消す事ができるんじゃないか? その上、外付けハードディスクで保存したら何かあったときにもこの貴重な資料を失わずに済む。「よし、MDをパソコンに取り込もう。きっと色々なソフトや機材が出てるだろうな」とスキップランランで池袋お抱えの量販店に出かけた。

 そしてそこで驚愕の事実に俺は愕然としたのだ。