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 先日、NPO法人「ALS/MNDサポートセンターさくら会」の「難病コミュニケーション支援講座」に参加しました(写真1)。この講座は、NECの社会貢献室が協賛しています。ALS(amyotrophic lateral sclerosis)とは、筋萎縮性側索硬化症という進行性の神経難病の略称です。全身の運動神経が徐々に縮んで動かなくなる病気で、進行すると会話もできなくなってしまいます。

難病コミュニケーション支援講座の受講風景
難病コミュニケーション支援講座の受講風景
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 闘病生活において、コミュニケーションを取れないのはとても辛いこと。支える側も、患者と意思疎通できないことに悩みます。今回の講座では、病状が進み、思うように会話ができなくなった患者さんとのコミュニケーション手段を3種類紹介しました。(1)目や唇のわずかな動きを読み取る方法、(2)文字盤などの道具を使う方法、(3)パソコンなどの電子機器を使う方法、があるそうです。

 (1)は、次のような方法でコミュニケーションを確立します。例えば、唇を少し動かせる患者さんが、「す」と言いたいとします。ヘルパーさんが50音を「あ、か、さ……」と読み上げると、患者さんは目的の「す」がある行、つまりヘルパーさんが「さ」と言った時に唇を少し動かします。するとヘルパーさんは、さ行を順に「さ、し、す……」と読み上げます。「す」と言ったときに患者さんがまた唇を少し動かし、「す」が確定します。

 これは、とてもレベルの高い方法です。私も、ビデオ映像の中の患者さんを見ていたのですが、唇を動かしたことは全く認識できませんでした。それほどわずかな動きなのです。ところが、熟練したヘルパーさんはいとも簡単に文字を確定し、文章に組み立て、「今日は天気がいいですね」などと患者さんの言葉を私たちに伝えてくれます。患者さんの動きを読み取る能力もさることながら、文章にするまでの文字をすべて記憶しておく記憶力も感動ものです。

 (2)の方法では、ドラマ「1リットルの涙」でも使われた透明文字盤を活用します。透明文字盤とは、ひらがなや濁点が表記してある無色透明のアクリル版。ヘルパーさんが、患者さんの目から30cmくらい離した位置に文字盤を持って立ちます。患者さんは伝えようとする文字を見つめ、ヘルパーさんがこれと思った文字を読み上げていきます。正解したら、患者さんは瞬きするなどの合図を送ります。この方法も慣れてくると、とても高速に意思疎通でき、次々に文章ができあがります。