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 「ドラクエ」こと、「ドラゴンクエスト IX」が7月に発売開始となって以来、心なしか電車内でDSをする人が増えたように思う。発売直後は車内でワイシャツ姿の会社員が両手でDSを握り、画面の中のモンスターと戦っている姿が目立った。

 ある日電車で長いすに座ると、両脇ともドラクエをプレイしていた。右の隣人の画面をチラ見すると、どこかの草原でモンスターと戦っていた。次に反対側にいる左の隣人の画面をチラ見すると、どこかの町を探索していた。それならば……。

 「ねえねえ、それどこの町ですか。ねえねえ、隣のお兄さんは○○って町にいるらしいですよ。そっちはレベルはいくつまで上がりましたか? あのね、こちらのお兄さんはレベルがXXまで上がったらしいですよ」

 なんて顔を左右に振りながら、両脇の勇者を仲立ちする自分の姿を想像した。だが、……もちろん、やめておいた。勇者たちは自分の冒険に没頭しているのだ。別の世界にいる勇者と比較されるなんて煩わしいことだろう。でも、せっかく同じ世界で冒険している勇者同士なのだから、意外と意気投合するのではないかな、なんて思いたくなるのだが。

 ドラクエは子どものころ夢中になってプレイした。数年前にもDS版の「IV」を久々に再びプレイしたが、やっぱりドラクエは面白い。経験を積むと自分や仲間が強くなり、さらに強い敵と対峙(たいじ)できるようになる。個性あふれる登場人物との出会いや謎解きが折り混ざった物語もわくわくする。

 だが筆者は一度クリアしたゲームであればめったに繰り返すことはない。ラストを見れば、もうその世界とは決別できる。だがDSで「IV」の世界を再訪問しようという気になったのは、その一つに「すれ違い通信」というのがあったからだと思う。

 すれ違い通信というのはドラクエに限らず、「どうぶつの森」などDSのゲームに組み込まれる面白い仕組みだ。ゲームで「すれ違い通信」モードを選んでおくと、端末は通信待機状態となる。その間はゲームはできず、端末のふたを閉じていてもいい(だが通信機能をアクティブにするため、当然ながら電池も消耗する)。この時、近距離に同じモードとなっているDS端末があると、両者の間で自動的に相互通信し、ちょっとしたデータが交換される。

 交換するデータはドラクエだとプレーヤーが作ったキャラクターであったり、どうぶつの森だと手紙だったりする。すれ違い通信モードにしたDSを鞄に忍ばせておいて町を歩くと、いつの間にか誰かとデータを交換していたりするのだ。

 「それのどこが面白いの?」

 すれ違い通信を話題にしていたら、脇で聞いていた人が素朴にこう訊ねてきた。町で見ず知らずの人と手紙や小物を交換して楽しいと思うだろうか。それと同様に、見ず知らずの相手からゲームのデータをもらうことで何が嬉しいのか。そこにどんな価値があるのか。疑問に思うのは無理もない。