電子ブック業界が、ここのところ急にあわただしさを増しているようである。
電子ブックリーダーの代表格、アマゾンが電子ブックリーダーの新型「Kindle 2」を発売したのに続いて、大型「Kindle DX」を発表。大学の教科書市場に狙いを定めていることもわかってきた。中学、高校の教科書市場のデジタル化が進みそうなのも、このコラムでお伝えした通りである。
電子ブックリーダーと言えば、ソニーもこれまではなかった通信機能とタッチスクリーン機能を搭載して新型を発表。アマゾンは、iPhone用のKindleアプリを発表して、Kindle市場を広げようとする一方で、ソニーは標準型のePUBフォーマットを採用してグーグルと提携し、同社のブック検索の無料書籍データを取り込もうとしている。
電子ブックリーダーについては、この大物2社以外にも大手書店チェーン、ボーダーズのイギリス支社が、イロネックス社製のブックリーダーを発売する見込みだし、アメリカのプラスティック・ロジック社もビジネス・ユースに焦点をあてたブックリーダーを来年、2010年初頭に発表する計画だ。ああ、そうだ。アマゾンは先日、世界各国でのKindle(英語版)発売に乗り出すと発表した。
『ダヴィンチ・コード』の著者、ダン・ブラウンの新作『ロスト・シンボル』は、発売初日で電子ブック版の売り上げ部数が書籍版を上回って話題になった。ただし、その後は書籍版がぐんぐん追い上げて、電子ブックの5%ルール(電子ブック版の売り上げ部数は、全体の約5%)にだいたい沿っているという。
電子ブック業界は、何もブックリーダーだけに限らない。オンラインで無料ダウンロードできる「プロジェクト・グーテンベルグ」は、ボランティアと寄付によって成り立っている電子ブックライブラリーで、iPhoneをはじめとするスマートフォンでも読めるようになっている。
グーテンベルグのライブラリーは著作権の保護期間切れした本が中心だが、そのラインアップにはグッと身を乗り出してしまう。たとえば、ここ最近のダウンロードベスト100を見てみると、『不思議の国のアリス』、『プライドと偏見』、『ドラキュラ』、『ユリシーズ』、『シャーロック・ホームズの冒険』、『二都物語』などが並んでいる。懐かしいタイトルあり、聞いたこともないおもしろそうな本あり。時間があれば読みたいなあ、という気にさせる。
日本でも話題になっているグーグルのブック検索の和解問題は、司法省が「このままの内容で認めるのは、いかがなものか」と意見して、グーグルと作家ギルド、出版協会が再検討を行っている。書籍の電子データに関するグーグルの独占的立場が緩和されるものと期待されている。そうすれば、他の企業がデータ再利用に乗り出してくるだろう。