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 私が子供のころ、給料日は特別な日でした。いつもは飲んで遅く帰ってくる父親が、この日だけは早く帰宅するのです。そして、自慢げに母に手渡す給料袋は、見た目にもずっしりと重みがありました。当時は、まだ現金支給が当たり前だった時代。この日だけは、父親が少しだけ頼もしく思えたものです。

 時代は変わりました。現金支給は、もはや完全に過去の遺物。それどころか、紙の給与明細を廃止し、代わりにWebやメールで配信する企業も増えてきました。実は最近、我が社でも給与明細が電子化され、Web上で閲覧するようになりました。こうなると、給料日の存在もすっかり影が薄くなります。「気が付いたら給料日が過ぎていた」なんてこともザラ。給与明細を見て「今月もご苦労さん」と言ってくれた妻の一言も、当然のごとくなくなりました。

 先日、ソフトメーカーのインターコムが発売する「Web給金帳」という新製品の説明会に出席しました。このソフトは、給与計算ソフトで作成された給与明細データを取り込み、それをPDFファイルや携帯メールなどの形式に変換して、Webや電子メールで配信するものです。同社は「従業員500人規模の会社なら、用紙代や印刷費などの削減により、年間46万5000円のコスト削減ができる」と胸を張ります。

 電子化が進むきっかけとなったのは、2006年に改正された所得税法です。これにより、給与明細書や源泉徴収票の電子配布が認められるようになりました(施行は2007年)。さらに、昨年のリーマンショック以後、多くの企業が経費削減に躍起になっていることも、この動きを後押ししています。恐らく、給与明細の電子配布は、今後ますます拡大するでしょう。

 しかし、サラリーマンにとって、父親の存在感を示せる唯一のセレモニーがなくなるのは、寂しい限り。給料袋を母に手渡す父の笑顔は、40年近く経った今もまぶたに焼き付いています。