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 教科書というと、新学期に一斉に配られたもの、あるいは学校から指定されたものを買いそろえた、という記憶がある。今から思うと学ぶ側に選択の余地がなかったのだが、少なくとも筆者はそれで支障を感じなかった。だが、今後は技術を活用し、生徒各人に合わせた教科書を選べる時代になるかもしれない。ただし、誤解のなきよう。選ぶのは教科書会社ではなく、教科書のコンテンツを表示するスタイル(書式)だ。

 まずは弱視という視覚障害について話をしたい。その程度から症状までかなり幅がある。単に視力の強弱だけではない。見える範囲が狭くなる視野狭窄から、暗転や欠損、色覚障害、目が揺れる眼揺など障害の影響はさまざまだ。それゆえに、「見えにくい」人への支援は単に「文字を大きくすればいい」ということにはならない。極端な例で言うと視野狭窄。見える範囲が狭いのに、文字を大きくしてしまっては視野に入る情報量がさらに少なくなってしまう。

 現在、視覚に障害のある人は約30万人いる。多くが高齢者であるが、若い世代も少なからずいる。筑波大学付属視覚特別支援学校の宇野和博教諭は「文部科学省の実体調査によると、小学校から高校までの学齢段階で6800人」と話す。

 こうした子どもたちの教育に重要なのが「拡大教科書」だ。視力の弱い子どものために文字を大きくしたものだ。宇野教諭によると、18~26ポイントの文字であれば7~8割の需要をカバーできるという。出版社が発行するものもあるが、多くはボランティアの手により書き写し、あるいはワープロで打ち直しして提供している。

手書きの歴史教科書(左)と、日経パソコン
手書きの歴史教科書(左)と、日経パソコン
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出版社から発行された算数の教科書(左)と、日経パソコン
出版社から発行された算数の教科書(左)と、日経パソコン
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 文字サイズの変更以外にも、色弱の人向けには色を変更したり、濃淡をつけたりなどの工夫をする。いずれにしても特別仕立てになってしまうので、手間と費用がかかる。文部科学省の実態調査によると拡大教科書を必要とする子どもたちは約2000人、しかし十分に行き渡っていないのが現状だ。

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