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 昨今のベストセラーには、脳を鍛えるたぐいの本が並んでいる。ニンテンドーDSでも大人の脳を鍛えるソフトが人気だ。情報も物もあふれているのに、なぜか自分の潜在能力を生かしきれていないと感じる人が多いからだろうか。

 先日『脳の自律システムの仕組みと性質』の著者、豊田 誠氏と恒例のランチ議論を交わした。豊田氏はかつて日立、富士通などで大型計算機のOSやシステム設計に従事し、現在は産業技術総合研究所サービス工学研究センターの招聘研究員を務める。脳とシステムの両方に詳しい豊田氏との「脳を活性化させる」議論の一部を、パソコンに例えて7つの原則にまとめてみた。

1.積極スワップで空きメモリー確保

 メモリーが大きいほど処理が速くなるのはご存じの通り。しかし大人になってから脳のメモリーを増やすのは難しい。だとしたら、いかに速く余計な情報をメモリーから削除してワークスペースを確保するかが大切だ。あれこれ悩みやひらめきを抱え込まずに、ブログなどに書き込むなり、ディスク保存するなりして脳を日々リセットしたい。

2.出力するほど入力が増える不思議

 ブログやメルマガ実践者なら体感している通り、情報発信(=出力)するほど入力も増える。ネタ探しでセンサー感度が上がる上、読者や縁者(=接続するネットワーク)が広がるからだ。脳を鍛える本やソフトも悪くはないが、むしろネタ探しで野山や街を歩いたり、ネット縁者と会った方が、入力情報の量と質が高まりそうだ。

3.常にCPU使用率100%で回せ

 脳がパソコンと違うのは、筋肉のように適度な負荷で鍛えられることだ。メモリー解放を兼ねて情報発信を習慣化すれば、入力情報も増えて多様になる。この状況は脳トレそのものだ。大量のメール送受信や日々のブログ更新を何年も続ければ、所要時間は短縮され、出来映えも良くなるものである。

4.スリープ&バックアップが生命線

 ただし、ブログやSNSにはまると寝不足になりがちなので注意が必要だ。メモリーに短期蓄積された情報は睡眠中に整理整頓されて、脳の長期保存用ストレージに格納されるらしい。つまり、睡眠は脳にとって重要なバックアップ時間。睡眠時間が少ないと、体内時計調整やメモリー解放もままならず「不眠」や「うつ」にもなりやすい。

5.データベースの主キーは感動体験

 さまざまなテーマやキーワードで書き続けたブログは検索エンジンでヒットしやすい。同様に、幼少期から多様な感動体験の記憶を脳に大量に書き込んでいる人は有利だ。脳が入力情報に応じて過去の記憶を検索し引用する際、より多様な情報が連想され、並列で非線形処理されるからだ。「ググってウィキして会いにいく」実体験の積み重ねで、多様な記憶をストレージしたいものだ。

6.若者の脳が低電圧版なワケ

 昨今の若者が不感症に見えるのは、入力不足×センサーの鈍さ×多様な感動体験の記憶が乏しいという三重苦が原因ではないかと考える。特に「今ここ」での体験と共鳴して呼び覚まされるべき「過去の感動体験」が絶対的に不足しているとしたら深刻だ。感動なくして新たな行動は起こらない。ゲーム脳と呼ばれるような、特定分野のダイナミックレンジの狭い情報ばかり蓄積された脳も、多様な共鳴を妨げそうだ。

7.発想は小脳シングルコア主義で

 豊田氏は、脳の機能でも重視すべきは運動を司る小脳だと主張する。言語による思考に支配されがちな大脳皮質はむしろ自由な発想や行動の邪魔をしているのではないかと話し合った。確かに古今東西の瞑想法には、何かの行動に集中して思考の働きを抑え、脳を活性化するものが多い。あれこれ考えるより、散歩でもしていた方がひらめきを得やすいのも同じ理屈だろう。

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 どうやら脳を活性化させたいなら、パソコン漬けより、自然や人に接して、体と心を動かす方がよさそうだ。そして日々感動を発信してすっきりした後、よく寝て忘れる方がひらめきそうだ。