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 広告業界にBTLという隠語があることを先日、広告代理店の友人から教わった。これはbelow the lineの略語だ。ATL=above the lineは新聞・雑誌・ラジオ・テレビのマスメディア4媒体。BTLはそれ以外の細々とした広告媒体で、今やその代表格がネット広告らしい。

 これまでの広告業界ではATLが花形だったがその落ち込みは著しい。だからこそ大手代理店ではBTLのネット広告事業をM&Aで内製化してまで注力しようと躍起だ。10年来の当コラム読者には想定内の事象だろうが、この半年に私が体感したことは、いよいよ「ネットがマスメディアを呑み込む日」が来たかと驚かされることばかりであった。

1.ブログにドイツ外務省から招待状

 ある日、私のブログにコメントがあり、よく読むとドイツ外務省からのIT視察旅行への招待状であった。うそかと思いきや、通常なら訪問できないドイツのメディア企業を訪ね歩くことができた。日本でも先進企業が、影響力のある国内ブロガーをイベントに招待することは多い。しかし、一国の政府が海外のブロガーを吟味し、記事コメントで招待する時代になるとは思わなかった。

2.旧東独はネット新聞に広告集中

 ライプツィヒで訪ねたネット新聞社は共同ビルの小さな一室だった。しかしネットを通じて全国のプロの記者とつながり、効率的かつ機動的に発信していた。驚いたのは、旧体制を引きずり論調が偏った伝統的大新聞よりも、できて数年のネット新聞の方が広告を集めていることだ。マスメディアに信頼がない国ほど逆にネットメディアが栄える黄金則をここでも目にした。

3.QAで「あなたに合うのは○○党」

 ドイツでも若者たちの活字・政治離れは著しい。そこで登場したのが、公的機関が提供している若者向け選挙支援サービスだ。Web上で簡単な質問に答えると「あなたの望む政策を実現してくれるのは○○党」と診断してくれる。若者に響かぬ旧態依然の政治報道があふれ、選挙期間中は候補者のネット発信禁止の某国でも、このサービスが普及したら政治が変わろう。

4.巨大クモロボットの真相報道

 先日プレス内見会で、フランスから到来した巨大クモロボットを見た。われらがアシモを見たことがある人ならローテクからくりに絶句しよう。詰めかけたテレビ取材陣は困惑したが、スポンサーの手前か見栄え良く編集してから放送した。しかしWebカメラとネットPCの軽装備ニュース班は、ため息が聞こえそうな現場の状況をありのままに面白おかしく実況報道した。

5.バラエティーを高画質で見たいか

 地デジ放送への移行に伴い、昨今のテレビの高解像度化はめまぐるしい。しかし皮肉にも一方で、景況悪化で広告収入と制作予算が激減したのか番組の均質化が著しい。グルメや旅行、芸人を集めたクイズやバラエティー番組ばかりがますます目立つようになり、再放送も多い。これでは高解像度で見るべき番組が見つからない。

6.GWは渋滞もホテルもネットが頼り

 テレビではゴールデンウイーク前後に高速道路の大渋滞が目立った。しかし、ほぼリアルタイムで確認できるネットの道路交通情報を見ながら行動したおかげで、渋滞を避けて移動できた。また、宿探しも大変だと思いきや、わずか1~2週間前にネットで探すと希望するホテルがあっさり予約できた。それも、本来なら会員以外は泊まりづらいようなリゾートだった。

7.スーザン・ボイル現象ははじまりだ

 地元ローカルのオーディション番組に登場した無名のおばさまの熱唱が、またたく間にYouTubeで世界中の数千万人に知れ渡った。さらに、各国のマスメディアまでがこのニュースを取り上げた。この件を境として、YouTubeへ積極的に情報提供したり、YouTube発の映像を番組のソースとして取り込むテレビ局が急増しよう。

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 ATLメディアはネットに呑み込まれてなくなるわけではない。融合し生かし合うハイブリッド時代の幕開けなのだ。