PR

 PDAやスマートフォンを使う人は、接続先のパソコンを「母艦」ということがあります。ですから、パソコンとの接続が不可欠なモバイルデバイスを「マザコン」デバイスと私は呼んでいます。パソコンに接続しないと使えないデバイスは、なんだか、親離れできない「マザコン」息子のような感じがするからです。

 かつては、携帯電話やPDAなど多くのモバイルデバイスは、パソコンとは無関係な製品でした。といっても20年以上前の話です。パソコンと接続して、データ交換などがちゃんとできるようになったのは、米ヒューレット・パッカードの95LX(1991年登場)あたりで、それ以前は、モバイルデバイスに入力した情報をパソコンに転送したり、パソコン側の住所録などの情報をモバイルデバイスに転送したりすることはほとんどできませんでした。

 今では、普通の携帯電話でも簡単にパソコンに接続できて、住所録などを転送することができます。こうしたモバイルデバイスとパソコンとの関係を大きく変えたのが「Palm Pilot」です。後にPalmと呼ばれるようになりましたが、最初に登場した米USロボティクス(当時はモデムで有名な会社でした)の「Pilot 1000」(1996年登場)という機種では、パソコンにシリアル接続し、専用ソフトを起動しておけば、ボタン一つでデータの同期が開始されて、パソコン側で入力した予定やアドレス帳などのデータを簡単に転送することができました。

 95LXにも似たような機能があったのですが、MS-DOS時代(Windows 95登場以前)だったために、ソフトウエアを常駐さておくことが困難で、同期させるにはパソコン側でも95LX側でも操作が必要で、わりと面倒でした。パソコンとモバイルデバイスの依存関係ができたのは、パソコン側がWindows(実際にはWindows 95以降)となり、ソフトウエアを常駐させておくのが簡単になったというのが理由の一つです。Palm Pilot以後、モバイルデバイスは、パソコンに接続して情報交換ができるだけでなく、簡単にデータをやりとりできるというのが普通になりました。ですが、このPalm Pilotは「パソコンに依存するモバイルデバイス」という考え方を当たり前にしてしまいました。

 パソコンに接続して使うというデバイスでもっとも普及しているのは、iPodなどの携帯音楽プレーヤーでしょうか。CDから直接録音できる機種もありますが、原則、携帯音楽プレーヤーはパソコンに接続してMP3などの楽曲ファイルを転送することを前提に作られています。国内家電メーカーが、この音楽プレーヤーで出遅れたのは、パソコンに接続するという「他社依存」のスタイルが、国内家電メーカーのやり方に合わなかったからです。それまで、国内家電メーカーは、必要なものはすべて自社で提供して、きちんとサポートできるものだけが接続できるという考え方だったのです。パソコンも自社製品ならともかく、他社の、あるいは自作のパソコンなどをサポートすることはできないというのが基本的な考え方であったために、パソコンがないと使えない商品を販売することにちゅうちょがあったのです。

 しかし、結果的に成功したのはパソコンとの接続を必要とするiPodでした。iPodも最初は話題先行的なものでした。というのは、接続できるのがMacだけだったからです。iPodが大きく伸びるのは、第二世代になってWindowsをサポートしてからでした。モバイルデバイスにとって、パソコンと接続することがここ10年ぐらいのトレンドだったといってもいいでしょう。