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 米AT&Tは2009年10月、iPhoneから3Gネットワークを経由したインターネット電話利用を許可する方針を発表した。iPhoneから無線LAN経由でSkypeなどを使いインターネット電話を利用できるだけでなく、移動通信事業者の3Gネットワーク経由でも使えるようになったことで、AT&T加入者は携帯電話・スマートフォンから自由に料金の安い音声通話を利用できるようになったのだ。

 移動通信事業者が提供するサービスに限らず、どんなサービスにもつながるようにしないといけないというFCC(米連邦通信委員会)が標榜する「ネットワーク中立性」に従うものである。このニュースは日本でも話題になった。

 この動きが意味するところは大きい。無線LANが使えない地域はあっても、携帯電話のデータ通信が使えない地域はほとんどないので、移動通信事業者のネットワークが開放されれば、移動しながらどこでもインターネット電話が使えるようになる。インターネット電話は加入者間の無料通話が目玉でもあるので、iPhone加入者どうしの無料通話はもちろん、家庭のインターネット電話との無料通話もできるようになる。国際電話も断然安くなるし、国際ローミングもいらなくなる。国際ローミングは、電話をかける方も受け取る方も電話代を払わなくてはならないので、負担が大きかった。

 移動通信事業者からすれば、モバイルインターネット電話を使わせることにより、重要な収益源である音声通話収入が大きく減るのは明らかだ。今後の見込みにしろ、モバイル端末と無線LANによる4Gネットワークが結びつくことで、どんな端末からもモバイルインターネット電話が使えるようになり、音声からの収益がますます減ることは間違いない。逆にネットワークを開放しても基本料は取れるので、市場先行効果を狙い加入者をたくさん確保した方が安定した成長ができるかもしれない。

 韓国で大人気のiPhoneからモバイルインターネット電話はできるのか? 3Gネットワークを使う通話で言えば「ノー」である。日本のiPhoneは無線LAN経由ではインターネット電話(Skypeなど)が使えても3Gネットワークからは禁止されている。同様に、韓国のiPhoneを提供するKTも、無線LANを経由したインターネット電話は利用できても3Gネットワークからは利用できないようにしている。

音声利用が多い韓国ユーザー

 ところが、いわゆる「脱獄(jailbreak)」として、3Gネットワークを無線LANとして誤認識させるアプリをダウンロードし、インターネット電話を使うユーザーが増えている。

 韓国KTのiPhone料金は2年約定の基本料に応じて無料通話150~800分、データ通信100MB~3GB、SMS200~300件+無線LANの利用が無料となっている。首都圏ではどこでもKTの無線LANを利用できるので、データ通信を利用しなくても済んでしまう。結果、毎月の無料データ通信分を全部消費しきれない。そのため「脱獄」して3Gネットワークからインターネット電話を使うことでデータ通信を消費するのが裏技として広がっている。そのほかに、3Gネットワーク経由でインスタントメッセンジャーの音声チャット機能を使った通話もできたが、これは2010年2月時点で3Gネットワーク経由でのアクセスが禁じられている。

 ユーザーらは「料金に含まれている3Gネットワークを利用しているだけなのになぜ禁止するのか」と早速反発している。3Gを無線LANに誤認識させるとはいっても、基本料内で使っているのでKTに損害を与えたわけではなく、これは違法ではないという主張だ。KTは「脱獄」できないようにするというが、この手のアプリは続々登場しているので、いたちごっこになる可能性が高いのではないだろうか。これではユーザーの反感を買うだけだ。AT&Tがネットワークを開放しているだけに、なぜいまさら閉鎖的な運営をしようとしているのかと非難も多い。

 日本の移動通信事業者のARPU(1契約当たりの平均収入)は平均的に音声6・データ通信4ぐらいであるが、韓国は音声8・データ通信2、音声通信の収入が圧倒的に多い。日本では定額料金制などで一時期ARPUが減ったものの、最近はデータ通信分が伸びたことでARPUも伸びている。しかし韓国では長年“勝手サイト”にアクセスできないようネットワークを閉鎖的に運営した結果、音声通話だけ伸びてデータ通信分が停滞または減少するという、世界の流れに逆行する現象が起きた。音声への要求は依然高いのだ。

Android搭載端末登場で状況は変わるか?

 KTは無線LAN、3G、Wibro(モバイルWiMAX)の3つのモバイル高速ネットワークを使える端末を発売している。モバイルインターネット移動通信最大手のSKテレコムは2Gでも無線LANを使えるようにすると発表した。無線LANとWibroのスポットも今の5倍ほどに拡大する予定だ。

 KTもSKテレコムも、FMC(有無線融合サービス)として、端末1台で携帯電話としてもインターネット電話としても使えることをしきりに宣伝している。自社のインターネット電話サービスがあるので、自前のネットワークを使って外部のインターネット電話を利用されては困るということなのだろうか。

 しかし3Gネットワークからのインターネット電話利用を禁止するとしても、携帯電話からインターネット電話を利用する時代に変わっていくことは間違いないだろう。締め付けを厳しくしてユーザーの反感を買うよりは、自由にして加入者確保と同時にモバイルインターネット電話の使い勝手向上を各事業者に工夫してもらいたいのだが、今のところ、目先の利益を優先したいようだ。

 2010年2月10日、KTのiPhoneに対抗してSKテレコムからモトローラのAndroid搭載端末が発売された。この端末からはGoogle Voice(米Googleが提供する音声通信管理サービス)を利用できるので、インターネット電話をどうするか、議論はまだ続きそうだ。