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 iPadの発売を今週末に控えて世間がわいているが、さて、これがアマゾンの電子書籍リーダー、Kindleを食うことになるかどうか興味深いところである。

 とは言うものの、電子書籍についてはこの二つとはまったく別のところで隆盛する勢力がある。スマートフォンだ。

 スマートフォンのユーザー動向を分析する会社、フラリーによると、昨年はスマートフォンを電子書籍リーダーとして利用する人が3カ月で3倍も増えたのだそうである。

 日本はコンピューターよりも携帯電話の国なので、「携帯で読む」ことはあまり珍しい話でないかもしれない。しかし、アメリカは何と言っても、一般ユーザーがデスクトップからラップトップにゆっくりと移行し、やっと携帯でいろいろなことをやろうと思い始めた消費者で占められる国である。しかも小回りのきく日本人と違って、図体も大きく指も太い人々(失礼!)は、なかなか携帯を日常的なデバイスとして捉えてこなかったところがあるのだ。ebookも、日本ほどには流行らなかったと思う。

 ところが最近は、飛行機の中でも背中を曲げてiPhoneやiPodの動画を見ている人が増えた。だいたいちゃんとした電車やバスというものがないので、他人の動向を見るのはいつも飛行機の中になるのが、アメリカだ。

 Kindleはそれなりに売れたのだが、本を読むのに、Kindleよりももっと速いスピードでスマートフォンを使う人が増えているという事実は、興味深い。KindleリーダーのアプリケーションがiPhoneやBlackberry用に開発されていることが影響しているし、Android用ではアルディコ(aldiko)というアプリケーションが結構優れものである。

 スマートフォンの小さな画面でもちゃんと本が読める環境が整ってきたこともあるだろう。それに、だいたいアメリカ人は「シブチン」である。つまりケチ。お金を使わずに機能が果たせるのなら、そっちを選ぼうとする。だから新たなデバイスを買う代わりに、スマートフォンに無料(あるいはとても廉価な)アプリケーションをダウンロードして、これまた無料の電子書籍を読んでいる人々が山ほどいるのだろう。

 Googleブック検索だけでなく、今やそこでスキャンされた書籍は、アマゾンでも別の電子書籍ストアでも多数手に入る。著作権切れした世界の名作もずいぶんそろっている。読みたいものを探すのに苦労しない。それも、無料なのだ。

何か「すごい」ものを提供できるか

 そうして考えると、私も含め、テクノロジー専門家たちが騒いでいるような「iPad対Kindle戦争の行方」というのは、ちょっと的外れかもしれないと感じ始めている。もちろん新しいモノ好きやお金に困らない人々はiPadを買うだろうが、iPadが電子書籍リーダー以外の何か「すごい」ものを見せつけて、ごくごく普通の消費者を説得しない限り、爆発的な売り上げは望めないのではないだろうか。

 その点では、電話としての機能も果たすiPhoneとは異なる。それに思い起こせば、iPhoneが加速度的に売れ始めたのは、アップルがその値段を100ドル以下に大幅値下げしてからである。安いから売れたのだ。iPadの価格が最低ラインでも499ドルというのは、普通のアメリカ人にとってはとても高いのである。

 まあ、それにしても、iPadの発売は楽しみではある。コンピューター界が何度も挑戦してきたタブレットコンピューター。それが成功するかどうか。成功すれば、テクノロジー界にまた新しいジャンルと市場が栄えることになる。

■変更履歴
「iPadの動画を見ている人が増えた」(5段落目)としておりましたが、「iPod」の間違いでした。本文は訂正済みです。[2010/04/02 15:30]