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 Windows 7の新機能の一つであるマルチタッチの1番のポイントは、実は、複数個所をタッチしても誤動作しない点です。

 これまで低コストなタッチパネルに使われてきた「抵抗式」は、複数個所にタッチしてしまうと、これを検出できず、間違った座標を出してしまう欠点がありました。マルチタッチ方式では、複数個所のタッチを検出できるので、こうした誤動作を排除できます。実は、これが、2本指を使って拡大・縮小するといったジェスチャー操作が可能になるよりも重要なポイントです。マルチタッチ対応のタッチパネルを採用することで、誤動作が減って、使いやすくなるのです。もちろん、製品によっても多少の差はあるでしょうし、正確なタッチに対して、ずれた座標を報告してしまう問題を完全に排除できるわけではありません。ですが、マルチタッチの採用により、シングルタッチまでしか利用できなかったころに比べてタッチでの操作性がぐんと向上することになります。

 現在、Windows 7が動作する板状のPCである「Slate PC」が開発中されています。今年1月に米国で開催された家電のイベントであるCESで、米マイクロソフトのバルマーCEOが、こうした製品を「Slate PC」として紹介したのが最初です。

 問題はWindows 7自体です。米ヒューレット・パッカード(HP)が発売前に公開しているビデオを見ると、どうも専用アプリケーションでタッチ操作を実現しているようです。また、HPは、Windows 7版と同時にAndroid版も開発していると聞きます。

 Windows 7は、従来のマウスを前提にしたWindowsの延長上にあるものです。マウスは、タッチパネルと違って、正確に画面上の1点をポイントすることが可能です。おそらく、XGA程度の解像度ならドット単位で―――もっとも画面の物理的なサイズにも影響されますが―――ポイントすることは難しくないでしょう。

 しかし、タッチパネルを指先で操作すると、指先とタッチパネルの接触部分は、ある程度の面積を持つため、正確なポイントは困難です。これで何が問題になるのかというと、Windows 7が標準でアプリケーションに提供しているボタンやスクロールバー、ウインドウのサイズ変更などの操作がかなり難しいのです。もちろん、こうした画面上のオブジェクトが、表示されるディスプレイ上で、指先と同程度の大きさになら問題はありません。しかし、持ち運ぶことを考えたモバイルデバイスでは、ディスプレイのサイズには制限があり、あまり大きくするわけにもいきません。

 Windows 7のウインドウの右上にある「クローズ」ボタンは、設定で大きくすることも可能です。ですが、そのためには、タイトルバー自体を大きくしなければなりません。これは、解像度があまり高くない機種では無駄なデザインになってしまいます。また、マルチタッチに対応したWindows 7では、「パン」(指でページにタッチしてドラッグ)のジェスチャーを使って、スクロールバーを操作しなくても画面をスクロールさせることは可能ですが、必ずしもすべてのアプリケーションでうまく動くとは限りません。これは、アプリケーション自体がスクロールバーやキーボードによる操作でスクロールすることを前提にしていることなどが理由です。また、アプリケーションによっては、マルチタッチで操作するとクラッシュしてしまうものもあります。おそらく、アプリケーションが想定していない「イベント・メッセージ」(ユーザーの操作やキーボードの打鍵などが行われたとき、Windowsは何が行われたのかをイベント・メッセージとしてアプリケーションに通知します)の組み合せやタイミングがあるのでしょう。

 HPのSlate PCが専用アプリケーションを動かしているのは、おそらく、Windows 7の基本GUIを使わずに操作するためだと思われます。デスクトップをすべて覆ってしまうアプリケーションの中であれば、自由にユーザーインタフェースを構築できるからです。ですが、Windows 7上で動作している以上、なんらかの操作でWindows 7のデスクトップに戻ることができるし、そこではWindows 7標準のユーザーインタフェースをタッチで使わねばなりません。また、Webページでは、マウス操作を前提とした小さなボタンなどを使っていることが少なくありません。こっちはちょっとやっかいで、Webサーバー側からは、パソコン用のWebブラウザーからアクセスされたことは分かっても、ユーザーがタッチパネルでパソコンを操作しているかどうかは区別できません。

 Windows 7をタッチのみで操作するのは難しい部分が多くあります。多くの操作にキーボードやタッチパッド/スティックなどを使い、例えば、メッセージボックスのOKボタンなどを押すときにタッチで操作するという使い方になりそうです。