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 もう7、8年前のことでしょうか。ジャーナリストの立花隆さんと故・筑紫哲也さんがテレビで対談していました。話が教育論に及んだとき、立花さんからこんな話が飛び出しました。「最新の調査によると、高校生の物理Iの履修率は、たった16%だそうです。これは驚くべきことですよ。日本人の6人に5人が、ニュートン力学を知らないし、半導体の知識もないことになる。これでは、とても技術立国とは言えません」。

 実は、日経PC21の最新号(7月号)でUSBメモリーの劣化問題を取り上げたとき、立花さんの話が頭から離れませんでした。USBメモリーのメカニズムを理解するには、半導体の知識が不可欠です。しかし、高校物理を学んだ人が16%しかいない現状では、読者が半導体の予備知識を持っていないことを前提に書かざるをえません。そのため、記事中ではUSBメモリーの仕組みを正確に理解していただくことは諦め、せめて感覚的にわかってもらえるように図表やイラストを多用した構成にしました。
 
 記事を書きながら考えたのは、文系志望者も高校で物理を学んだほうがよいのでは、ということです。もちろん「力学や半導体なんて専門家が知っておけば十分。文系志望の生徒に必要ない」という意見もあるでしょう。しかし、現代生活には半導体が身近にあふれています。パソコン、テレビ、冷蔵庫、自家用車…。今や半導体が入っていない製品を探す方が大変なくらいです。この流れは、今後ますます加速すると思います。文系志望の高校生だって、就職してから半導体の知識が必要になるかもしれません。

 技術立国を支えるのは、技術者だけではありません。営業や宣伝に携わる人々を結集した総合力で決まります。世界一の半導体メーカーにのし上がった韓国・サムソン社の強みは、詳しい製品知識を引っさげた営業マンが、海外で猛烈に売りまくった成果だとも言われます。日本の教育も、技術者だけでなく文系志望者の“理科力”を強化しなくてはなりません。日本メーカーが海外勢に打ち勝っていくには、それが不可欠だと思います。