先々週の当コラムで、多くの電子出版には、ものを売る気持ちが全く入っていないとアピールしたところ、多くの方から声援をいただいた。お金を出して買ったのにお目当ての記事が入っていない、旅先で読みたいから全部電子書籍で買いたいけど、売ってない。そんなわけで、へっぴり腰の出版界が頼りにならないなら、これからは自分で何とかしなくては、と別の道を探している人も増えてきた。そんな人に、朗報だ。Mac向けのワープロソフト「Pages '09」にiPhoneやiPadのiBooksで読めるEPUB形式でファイルを書き出す機能が追加されたのだ。ご自分で世界に売り込みたい原稿を持っている人は、これで、サクッとiBooksコンテンツを作って世界デビューできる(かも)。
さりげなく新機能追加
Pages '09はMac用のビジネスアプリケーションスイート「iWork '09」に含まれているワープロソフトだ。Macを購入すると最初から入っているソフトだが、古いMacの場合は新版('09)を有料で購入してこなければならない。図版の作成や、文字とグラフィックスが入り交じったレイアウトをしたいといった時に本当にスルスルと動いてくれて、すこぶる快適に使える。私も書籍執筆の際のラフレイアウト作りなどに重宝している。
で、昨日(2010/08/30)、さりげなく配付開始されたPages アップデート4.0.4には待望のサプライズプレゼントが含まれていた。ファイルの書き出し時にEPUB標準ファイルフォーマット(iBooks で使用)が選択できるようになったのだ(図1)。
電子出版に取り組もうとしている人には「Sigil」というオープンソースのプログラムがあり、すごく生産性の高い仕事ができるという話は、筆者が担当している他の出版社の連載記事で紹介したことがある。Sigilを使えばEPUBフォーマットという限られた機能の中で見栄えの良いコンテンツを作ることができるが、XHTMLやCSSといったWebのページ記述言語やXMLの知識も必要としていて、なかなか一般の人には取っつきにくいかも知れない(図2)。
そんな作業がPagesで「書き出すだけで」できるようになるとは、多くの人に朗報だろう。