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 夏休みが終わって秋になると、シリコンバレーではテクノロジー関連の会議が目白押しになる。インテル、オラクルを含め、冬まで多くのイベントが続いている。

 その中でも、今年のオラクルはいろいろな意味で開催前から関係者の興味と注目を集めていた。その理由のひとつは、ヒューレット・パッカード(HP)のCEO(最高経営責任者)を辞任して、すぐさまオラクルの共同会長に就いたマーク・ハードが壇上に立つかどうか。2つ目は、ハードのこの転職で関係が悪くなったHPとオラクルが、どうそれを修復するのかだ。

 何よりもテクノロジー開発で世界を先導するシリコンバレーだが、ここがおもしろいのはそれだけではない。この場所は、けっこう破廉恥なできごとがいろいろあって楽しめるのだ。むき出しの競争心や、裏工作、常識外れの行動などがよく起こり、まさに「ワイルド・ウェスト(開拓前線)」といった様相なのである。

 このHP/オラクルのケースでは、マーク・ハードがセクシュアルハラスメント騒ぎでHPを辞任したことに端を発している。同社のコンサルタントを務めた女優との関係だったらしい。その内容はいまひとつはっきりせず、実際には女優と一緒にとった食事の経費計上で、それを明確に記さなかったとのことで、役員会から辞任に追い込まれた。

 その役員会をおおっぴらに責め立てたのが、オラクル創設者兼CEOのラリー・エリソンだ。エリソンはハードの親友。もうひとりの大親友であるスティーブ・ジョブズの名前を出して、こう発言した。「マーク・ハードの解任は、アップルのアホ役員会がスティーブ・ジョブズを追い出して以来最大の人事の愚策」。

 こともあろうに、そのすぐ後にハードがオラクルの共同会長に就任して、世間をあっと驚かせた。HPとオラクルはさまざまな提携関係にもあるが、真っ向から競合もしている。HPのトップが競争相手のオラクルに転職し、社内機密情報などをそのまま持ち込むのではないかと、誰もが疑うだろう。この異動は、結局ハードがHP株をかなりの量返却することで収まったようだ。

 ハード就任と同時に、オラクルから追い出されたのは、同じくスキャンダルにまみれた共同会長チャールズ・フィリップスだ。フィリップスは、これまでオラクルのイベントで壇上に立って、長々とプレゼンテーションをする要職にあったが、今年初めに8年半も浮気をしていた相手にしっぺ返しをされた。

 「チャールズとヤヴォニー」と大きく書かれた2人のお熱い写真が、大型の看板になって全米各地に貼り出されたのである。相手の女性は別れたことを根に持っての行動(それにしても、浮気をするときには証拠写真を残すべからず、である)。彼女からはあれこれの写真がいろいろ出てきて、フィリップスは浮気をとうとう認めざるを得なくなった。フィリップスを追い出してハードを雇い入れたオラクルは、スキャンダルまみれの重役を別のスキャンダル重役と入れ替えたというわけだ。

 HPの役員会も妙な行動をしたことがあった。同社の長期的戦略計画がメディアに漏れたことがあり、それに対して役員会が外部の調査会社を雇った。情報を漏らしたのは、一体誰だと突き止めようとしたのだ。だが、その際に関係者やジャーナリストの電話記録を入手するという違法行為を行った。「行き過ぎたスパイ行為」として、刑罰が下っている。

 オラクルのエリソンは大物経営者として知られる一方、奇行も多く、いろいろ話題を提供してくれる。どんなケースだったか忘れたが、やはり調査会社を雇って競合企業のゴミ捨て場から資料を探し出させたこともあった。ゴミあさりまでするとは、まるで映画並みではないか。同氏は、何度も結婚と離婚を繰り返して、女性と浮き名を流し、一度はそのうちのひとりにおおやけに関係を明らかにされたこともあった。

 さて、今回のオラクルのイベントに話題を戻そう。そのマーク・ハードは、確かに壇上に現れたが、その時間たった数分。証拠代わりにともかく顔だけ出すという戦略だった。

 加えて今年の見物は、「クラウド」を巡る競争。CRM(顧客関係管理)ソフトのクラウドサービスで飛ぶ鳥も落とす勢いで伸びているセールスフォースを、エリソンが的にしたのだ。「あれはクラウドではない」と。それに対して、セールスフォースCEOのマーク・ベニオフは、「1億円のサーバーを買わせるようなオラクルのクラウドこそ、クラウドではない」と反撃。

 ベニオフはかつてオラクルの重役を務めたこともあり、エリソンとは懇意の仲だ。競争とは言え、発言にはユーモアが多少混じっているのだが、ビジネス上は本気だろう。大掛かりなクラウド戦略を打ち出すオラクルと、機動力をアピールするセールスフォースの競合がこれから繰り広げられるはずだ。

 そのセールスフォースのベニオフは、ダライ・ラマに傾倒する。「クラウド人間は、平和人間。喧嘩はしない」などと発言するので、つい笑ってしまった。ユニークな人である。

 それにしても、やっぱりキャラの立った人材がそろっているのが、シリコンバレーなのである。