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 auは、同社の販売するスマートフォンにSkypeを搭載します。事前のハードウエアの発表で、「禁断のソフトウエア」と呼んでいたのはSkypeのことでした。Skypeはご存じの通り、インターネット上の音声通信(VoIP。Voice Over IP)サービスで、おもにパソコン上で使われていました。スマートフォンに搭載されるのは今回が初めてというわけではなく、過去にWindows Mobile用などに提供されていたことがあります。

 従来、音声通話が時間による従量制だった携帯電話事業者では、Skypeのようなデータ通信を使った音声通話はあまり歓迎されませんでした。というのは、携帯電話では、音声通話とデータ通信に別の設備を使っていたからです。大多数の人が使う音声通話の設備(いわゆる交換機)を維持するためには、データ通信と音声通信を別の料金体系にするしかなかったのです。そのために、データ通信側で音声通話を実現することは事業者にとって歓迎できることではありませんでした。このため、海外などでは、データ通信でもSkypeの通信をインターネット側へ流さないようにフィルタリングしていたところもありました。

 なぜ、音声通話とデータ通信では別の設備を使っていたのかというと、もともと携帯電話は音声通信のために作られており、データ通信機能が付加されたのは後になってからだったためです。2G世代では、音声通信を扱ういわゆる「交換機」を中心に携帯電話のネットワーク(コアネットワーク)が作られ、これを拡張する形でデータ通信を可能にしました。

 データ通信を最初からコアネットワークに取り込んだのは3Gからでした。3Gのベースとなった国際電気通信連合(ITU)が規格化した「IMT-2000」では、欧州圏でGSM通信方式用に作られたMAP、米国でcdma通信方式用に作られたIS-41という2つの携帯電話ネットワークと、IP接続を合わせた3つがコアネットワークの規格に取り込まれたのです。しかし、米国や欧州圏の事業者は当初、既存のネットワークを利用するMAPもしくはIS-41だけを使いました。このようにすることで、既存のネットワークを3G化するコストを抑えたのです。半面、2Gのコアネットワーク方式を引き継いだため、3Gでも音声とデータ通信は、コアネットワーク内で別々に処理する形を引き継いだままでした。

 音声通話による利益が大きくてデータ通信のインフラが日本ほど整備されていない米国では、Skypeと携帯電話会社の関係は悪いままでした。SkypeなどのVoIP系の通信サービスに対して、通常の通信事業者と同じ義務を負わせるべきという議論などもあり、Skype自身も積極的に携帯電話市場に参入するというわけにもいかなくなりました。「禁断」とはそういう背景を指してのことです。ユーザーにSkypeを使わせれば自分の首を絞めるというのが携帯電話会社の「常識」だったわけです。

 これに対し、国内では携帯電話ネットワーク内で音声とデータ通信をコアネットワーク内で処理するIP化が比較的早く進行しました。

 音声通話による売り上げは、ユーザー数と利用時間で決まります。しかも、値段を下げたとしても利用者や利用時間が大きく増えるというものでもありません。また、コスト面でも、IP化されたコアネットワーク内の音声通話コストはかなり削減されていて、これ以上下げることは困難になっています。事業者から見ると、音声通話は、今や、成長が期待できないビジネスになってしまっています。

 一方で、データ通信の場合は、メールやWeb、各種サービスなどで利用時間や利用量を増やすことが可能です。メールとWebというように複数のサービスを同時に利用することもありえますし、ユーザーが直接操作しなくてもメール着信などのように自動的に通信されることもあります。このため、データ通信による売り上げは大きくすることか可能でした。日本では、データ通信により収益を増やすという傾向はすでに2Gのころから始まっており、iモードなどのメールやWebのサービスに多くの事業者が力を入れることになりました。

 こういうわけで、携帯電話のユーザーがSkypeを使って、その分の音声通話が減ったからといって事業者が大損するようなものではないのです。

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