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 2010年は、スマートフォンの年といってもいいぐらいで、国内の携帯事業者は、すべてスマートフォンをラインアップし、中には品不足になるぐらいの人気機種もありました。また、電子書籍も話題の一つ。ソニーやシャープが参入しましたが、今年は、これに続くメーカーも出てきそうです。

 今回は、恒例ということで、今年モバイルはどうなるのかを予想してみたいと思います。

 一番に来るであろう話題は、スマートフォンとパソコンの対立です。パソコンとスマートフォンは違うものという人もいれば、スマートフォンを使い始めてパソコンを使う機会が減ったという人や、パソコンよりもスマートフォンやそこから派生したタブレットなどに未来を見る人もいます。おそらく、それまでのパソコンとの関わり方が、スマートフォンを別なものに見せているのだと思われます。大きな視点でみれば、スマートフォンとパソコン、特にモバイルPCとは大きな対立関係の一部といえます。つまり、WindowsとLinuxなどの非Windowsの対立であり、ARMプロセッサーとAtomプロセッサーの対立であり、パソコン業界と携帯電話業界の対立であるといえます。パソコンとスマートフォンは、属する業界や市場、関わるメーカーなどが違っているものの、一部のユーザーに対しては、対立関係にあるといえます。

 特に、パソコンなどでいう「カジュアルユーザー」、いわゆるメールとWebの利用のためにパソコンを使っているユーザーに対して、スマートフォンはパソコンを置き換えるもののように見えます。実際、スマートフォンを使えば、通常のパソコンと同じようにメールが利用できますし、PDFやWord、Excelのファイルを閲覧することも可能です。また、内容によってはWordやExcelの編集も不可能ではありません。いわゆるTwitterなどのSNSも、パソコンなみに利用できるし、専用ソフトウエアも用意されていて、使い勝手も悪くありません。

 ただ、写真を精細に見るなんてことは、ちょっと難しいですし、簡単なレタッチ作業はできても、背景を消すような大規模な修正は不可能ですし、視聴できるビデオの形式も限られていて、ビデオのフォーマット変換なども困難です。また、年賀状を作って印刷するなんてことも難しいでしょう。それに、スマートフォンのアプリケーション自体、基本的にはパソコンがなければ作成できません。

 そういうわけで、完全にパソコンを置き換えることは困難なのですが、簡単な用途でしか使わないユーザーには、十分な能力は持っています。その意味で、一番スマートフォンの影響を受けたパソコンの領域は、ネットブックかもしれません。

 さらに、スマートフォンのアーキテクチャは、タブレット端末の領域にも進出しています。iPadやGALAXY Tabといったタブレット端末は、基本的にはスマートフォンのアーキテクチャを採用しており、ある意味、大きなスマートフォンともいえます。一方で、一部のメーカーは、Atomプロセッサーを使ったタブレット端末にWindowsを採用しようとしています。そして、多くのノートパソコンにはWindowsが搭載されています。

 つまり、AndroidやiOSなどの非Windows系対Windowsの戦いにもなります。もちろん、Windowsを開発したのはマイクロソフトであり、Androidはグーグル、iOSはアップルが開発したのですが、メーカー間の戦いというよりも、それぞれのプラットフォームにつく開発者コミュニティまでをも含んだ競争といえ、単純なメーカー間のシェア争いというよりも、それぞれの志向性や方向の違いによる競争といえます。

 とはいえ、AndroidとiOSは非Windowsだからといって別に仲が良いわけでもありません。また、マイクロソフトはスマートフォンの領域にWindows Phone 7を投入しており、スマートフォンがネットブックやWindows搭載のタブレット端末と競合することに荷担しているわけです。ある種の「ねじれ」が生じています。

 スマートフォン対パソコンという大きな対立には、ARMアーキテクチャーとx86アーキテクチャーという対立もあります。インテルのAtomプロセッサーは、ある意味、ARMプロセッサーの対抗製品です。低消費電力と性能の両方を実現したAtomプロセッサーは、まずは、ネットブックという形で世間に受け入れられました。そして、一部のAtom搭載ネットブックは、Androidを搭載するというデモを行いました。実際、今年登場するタブレット端末の中には、Atomプロセッサーを採用しつつも、WindowsとAndroidの両方を搭載可能にするものがあるようです。

 ある領域では、ソフトウエアの互換性などからWindowsが必須というところもあれば、Windowsでなくても構わないという領域もあります。Androidは、オープンソースのLinuxなどをベースにおき、アプリケーションは仮想コードを使うJavaで開発するため、プロセッサーのアーキテクチャには依存しません。このため、x86系のプロセッサーでも、ARMプロセッサーと同様にAndroidを搭載して同じアプリケーションを利用できるのです。ARMプロセッサーは携帯電話に広く採用され、現在のスマートフォンのほとんどがARMプロセッサーベースです。これに対して、Atomプロセッサーもスマートフォンへの搭載を狙っています。「AtomでAndroid」という線は、今年の一つのポイントになると思われます。

 昨年あたりから、3Gモデムを搭載するノートパソコンが増えてきました。このあたりについては、携帯電話事業者がどれだけ柔軟な対応を取るかによって状況は変わってきます。携帯電話がSIMロックフリーになっていく傾向を考えると、パソコンにも最初から3Gや4Gのモデムが搭載されていて、あとから契約を追加するという方向もありえるでしょう。

 逆に3Gなどを搭載しないAndroid端末という方向も見えてきました。Androidは、これまでは3Gモデムを搭載していないハードウエアに関しては、Androidマーケットなどをライセンスしていませんでした。しかし、Android 2.2からは、この制限が消えたため、可能性としては、無線LAN搭載のみでも、条件を満たせば、Androidマーケットなどが利用可能になります。昨年発表された東芝の「Dynabook AZ」は、無線LANのみ搭載した、AndroidマーケットのないAndroidだったのですが、今年は、このクラスのマシンにもフルのAndroidが搭載されるかもしれません。