PR

群像プレ創刊号
販売:講談社
価格:無料

 純文学と聞くと、硬派な感じがするが、怖くはない。誰でも、読める。最初の一歩を踏み出すかどうか、それだけだ。
 私は高校生の頃、筒井康隆氏の大ファンだった。当時、筒井氏は国産SFの最前線にいたが、いつの頃からか純文学の領域での仕事が増えてきた。

 なんだか作風が変わってきたなーと思ったが、私は気にせずに読んでいた。筒井作品は筒井作品。どんなふうに書かれていようが面白い。
 筒井氏が実験作品を文芸雑誌に書き始めた経緯は追悼文「知の産業 -ある編集者」(『着想の技術』所収)を読んで分かった。『海』の編集長、塙嘉彦氏が純文学を書くように勧めたそうだ。

 『海』は海外の最新文学を載せる一方で、国内の作家の発掘にも力を入れていた。私は「自分がこんな雑誌買っていいのかなー」と思いつつ、毎月『海』を買い、また筒井氏がエッセイで紹介する作家の本を読んでいった。
 今では読書量の3割くらいが純文学である。どう考えてもこれは面白いだろうというものだけを厳選すると、そうなってしまう。

 『海』がなくなってから文芸雑誌の定期購読はしていないが、いまでも書店で『新潮』『文学界』『群像』『すばる』などをぱらぱらめくり、好きな作家が数人書いていれば買うこともある。
 文芸誌に書かれた作品が本にまとまるには時間がかかるので、雑誌を読むのは単行本を読むのとはまた違った楽しみがある。今書かれているテキストを併走しながら読んでいるような感覚。自分の目的の作品を読んでも、まだまだテキストは残っている。そこから、偶然、好きな文章と出会ったりすると、ものすごくうれしい。

 とはいえ、どのジャンルでも雑誌の経営は厳しい。
 とうとうマンガ雑誌からも赤字の声が聞こえてきた。
 こんな時代に、文芸雑誌を購読している人の数が極端に少ないであろうことは容易に想像できる。だから「今春から群像の電子版が創刊」と聞いても驚かなかった。作品の発表場所の確保、新人の発掘という意味合いなら、紙よりも電子版の方が有利だ。
 今後、出版社は高コストな雑誌の刊行に耐えられなくなってくる。そのとき、受け皿となるのはiPadのような読書用のデバイスである。今はまだ普及台数が少ないからすぐに紙と代替できるわけではないが、『群像』は来るべき未来を見通して実験を始めたのだろう。

「群像プレ創刊号」はApp Storeから無料でダウンロードできる。
「群像プレ創刊号」はApp Storeから無料でダウンロードできる。
[画像のクリックで拡大表示]