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担当者「表紙に『尖閣ビデオ対応』と入れれば、1万部は違いますよ」
編集長「……」
担当者「冗談ですよぉ」

 本日発売の日経PC21の特集「DVD/CD/ブルーレイ完全攻略」の表紙キャッチコピーをどうするか、検討していたときの話です。ネット動画が普及したことから、今回のDVD特集ではそれにも焦点を当てました(もちろんテーマの1つとしてです)。尖閣諸島漁船衝突ビデオはさておき、動画投稿サイトの気に入った映像をファイル保存してDVDビデオに焼き、「オモシロ動画集」を作ろう、という話です。

 で、冒頭の編集長「……」。尖閣ビデオをコピーに使うのはマズいだろ――誰だって普通そう思います。しかし、なぜマズいのか、ちょっと考えてみました。

 まず、著作権の問題。尖閣ビデオは著作物である可能性があり、ネットにはそれが違法(たぶん)にアップロードされている。違法な映像著作物をダウンロードする行為は違法であり(昨年1月から。ただし罰則はありません。そもそも親告罪ですし)、それを推奨するような記事は看過できない、という意見です。

 尖閣ビデオが著作物かどうかは、2010年12月27日号日経パソコンのコラム「焦点」で山口弁護士が見解を述べられており、昨年12月21日の「記事の芽」でも取り上げられています。それによると尖閣ビデオは単なる記録映像ではなく、編集作業を経た編集著作物とみなせる可能性があるようです。

 でも、ちょっと疑問を感じました。仮に著作物だったとして、それを家庭内の私的利用に限って複製して何が問題なの?という素朴な疑問です。著作権法の趣旨に沿って考えた場合、いったい誰に迷惑がかかるんでしょうか。政府は困るかもしれません。政府の見解に反するような行為を助長するような記事はいただけない、という意見もあるでしょう。ですが、「著作権法の趣旨に沿って何が問題か」と考えると、かなり疑問が残ります。

 著作権法と言うと「この行為は違法ですか」「このケースは?」といった合法・違法の二元論が先行しがちです。私も以前、某誌の著作権Q&A特集でそのような質問を投げかけ、弁護士の先生にたしなめられた経験があります。著作権法は文化を守るためにある、と。分かりやすく言うと、「いくら傑作を創ってもすぐ海賊版が出るんじゃやってられない。もう創作活動やめる」とクリエーターのみなさんが言い出したら、文化が滅びてしまう。著作権法はそれを防ぐのが本来の趣旨、と言われました。

 で、尖閣ビデオをダウンロードしたとして、政府のクリエーター活動に悪影響を及ぼし、ひいては文化の発展を阻害するのであろうか、と考えた次第です。ミュージシャンが「ネットから違法ダウンロードしないでCD買ってよ」と言うのとは違います。たぶん。これもいわゆる「疑似著作権」の一種なのかと頭を悩ませました(たぶん違いそう)。

 そうは言っても違法は違法。本来の趣旨がどうであろうが、決められた法を皆が遵守することに意義がある。その通りです。だから編集長「……」なのです。

 話は変わりますが、投稿動画のダウンロードに関しては、著作権法のほかに利用規約の疑問もあります。いわゆるダウンロード禁止の問題です。動画投稿サイトによっては、誰でも見られる非会員制なのに、利用規約でダウンロードを禁止しているところがあります(ストリーミングでのみ視聴可能)。しかし、その効力はいかがなものなのでしょうか?

 利用規約を読んで「同意」をクリックして会員登録するサイトならいざしらず、誰でも見られるサイトで「○○禁止」とは……。分かりやすい例で考えてみましょう。あなたがホームページを作って写真を掲載し、その横に「ダウンロード禁止」と書いたとします。その効力は、非会員制のウェブサイトの利用規約と同等なのでしょうか? あるいは「このサイトは女の子専用です。男子は閲覧禁止」と書いてあるサイトに、男子がアクセスしたらどうなるんでしょうか?

 考えれば考えるほど頭が混乱してきます。で、先の「焦点」担当編集者に相談してみました。
 「この男子禁止問題、次の焦点で取り上げてよ」
 「次は、まねきTV最高裁逆転判決の話をやるからムリ」

 政府の創作意欲問題と一緒に、いつか誌面で黒白をつけてやろうと企んでおります。文字通り、「記事の芽」を述べさせていただきました。