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 そうか、そういう手があるか。

 インターネットを利用した商売には、時にひどく感心させられるものがある。先だってまたひとつ新しいものを見つけた。遭遇したのは、ニューヨークで開かれた電子書籍会議「DBW」でのことだ。この会議は出版関係者が大勢集うもので、デジタル化をどう進めていくかを議論する場でもある。

 いや、議論と言っても日本風に「足並みそろえる」ためではない。あれこれアイデアを持ち寄ったりお互いに比較したりして、情報交換しているのだ。アメリカの出版社はもう、どこも髪振り乱してデジタル化に全力疾走している。他社と足並みなどそろえている場合ではない、という感じだ。

 で、あるセッションで、電子書籍のフォーマット「EPUB」をさらに新しい段階へ底上げしなければならない、といったような話を出版社の関係者がやっていたところ、ある男性が手を上げて言う。「僕はテクノロジー側の人間なんだけどさ、そういう話はテクノロジーの人間たちに投げてみたらいいよ。標準化なんかは簡単な話で、もっと面白いアイデアをどんどん出してくれるはずだよ」。

 シリコンバレーからやってきて、ニューヨークの出版関係者の中に入ってみると、いろいろな意味で温度差を感じる。ゆっくりしたペース、伝統ある業界の落ち着いた感じ。ちょっとホッとするものもあるのだが、この男性の一言で、「そうそう、デジタルっていうのは、もっといろいろやってみるものなのよね」と思い出した。この男性は、モタモタと話をしている出版関係者に、とにかく何でもいいからやってみればいいじゃない、と告げたわけだ。

 セッション終了後、「で、あなたは何をやっている人ですか?」とこの男性のところに行って尋ねてみた。驚いたことに、「電子書籍の貸本業」なのだそうである。そんなものがあるのか?!

 アメリカの電子書籍は、プリント版(紙)と比べ物にならないくらい安い。日本の場合は「ちょっと安い」だけだが、アメリカは「すごく安い」のである。だから、私などは電子書籍版が手に入るとそれで十分満足してしまう。やっぱりアメリカ人はたくましい。さらに安い方法を考えるのだ。かくして、電子書籍の貸本業が出てくるというわけだ。