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 売り上げを落とすのでは……と禁じ手とされていた「発売前書籍のネット公開」が新たなマーケティング手法として注目されている。2009年11月に「フリー<無料>からお金を生みだす新戦略」(NHK出版)の全文がネットで公開されて話題になったことを契機に、他の出版社も追随した。

 実は、2008年8月に出版した拙著「考えすぎて動けない人のための『すぐやる!』技術」(日本実業出版社)も、執筆しながらブログで公開するという、発売前のネット公開を実施していた。出版業界の禁じ手を使いながら、累計15万部を超えて驚いている。

 一方で、iPadやGALAPAGOSなどの電子書籍端末が続々登場しており、アマゾンやグーグルの電子書籍戦略と合わせて目が離せない。

 そこで、書籍のネット公開に加え、これからの書籍はどんな形で執筆・出版されるのか、安くなるのか、無料になるのか、といった点を考えてみた。

ネット読者数が販売に直結

 インターネット社会は大御所受難の時代でもある。知名度が高い大御所が書いた書籍よりも、知る人ぞ知るネットワーカーの書籍が売れることも少なくないからだ。極論すれば、Twitterのフォロワー数やメルマガ読者数の方が、知名度よりも重要な意味を持つ。いち早くそれに気づいた大御所は、ネットの無料読者の拡大にも熱心である。

無料公開でクチコミを促す

 出版業界の悩みは、書籍が売れなくなったことだけではない。活字離れとネットの普及が重なって、これまで行ってきた書籍の宣伝手法が通用しなくなったらしいのだ。

 書籍も、今やネット通販で買うのが当たり前。とすれば、ネット通販の鉄則に従い、いかにクチコミを充実させるかの勝負になる。店頭や既存媒体での宣伝に加え、ネット上での露出が欠かせないのだ。その究極が、書籍のネット公開なのである。

つぶやいてくれれば感謝

 もちろん、ネットで書籍を無料公開すれば、タダ読みで済ませてしまう人も多いだろう。これは機会損失そのものだ。しかし、その1割でも、オンライン書店の書評欄、個人ブログやTwitterに記事を書いてくれたら感謝感激。著者も出版社も、その人に足を向けては眠れない。ほめ言葉ならぬ悪口であっても、クチコミはクチコミ。最高の販促となるのだ。

出版社へのラブコールにも

 自分の書籍を出版したいなら、思い切って最初から無料公開する方法もある。親しい公認会計士の望月実さんは、書籍の企画を大手出版社に持ち込んだが、当初は相手にされなかった。そこで一念発起、原稿をPDFファイルにして無料公開すると、それがある編集者の目に留まった。出版された「数字がダメな人用 会計のトリセツ[取扱説明書]」(日本実業出版社)は、アマゾンのランキングで見事1位を獲得した。

ブログ公開で執筆にリズム

 さらに、書籍の完成を待たずに、執筆しながらネットで公開する試みには、販促以外の効果もある。読者や編集者と対話しながら、少しずつ内容をブラッシュアップすることで、自然な執筆のリズムが生まれて書きやすいのだ。多忙な著者や筆が遅い著者でも、週に数本、小出しに書いていくのは難しくない。修正しながら書き進むので、後から大幅な書き直しにもならない。

売れないものは電子書籍で公開

 おかげさまで私も出版依頼を次々にいただけるようになった。しかし本当に自分が書きたい書籍を書けるわけではない。売れなければならないからだ。

 そんな私にも電子書籍の波は福音。書籍で稼ごうと思わなければ、売れない書籍でも出版できる道が開かれるからだ。ブログを気軽に書くように電子出版できる時代が目前に迫る。読者が望むならオンデマンド印刷もできる。

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 これまで書籍化されなかったニッチで面白いコンテンツが、無料あるいは格安で読める。しかも誰でもコンテンツ制作に参加でき、無料でPRできる革命が始まった。