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 iPhone、iPadに自分の好みに合ったヘッドホンを刺し、音楽を聴くと素晴らしいサウンドが楽しめる。音が悪い、と感じるならそれはヘッドホンの特性が好みの音質でないか、そもそも、録音が悪いか、音楽データを作る時のサンプリング(デジタル化)に問題があるかだ。中にはiPhone、iPod、iPadごときのオーディオセットしては貧弱な装置から良い音が出て来るわけがない、と決めつけておられる方も多いようだ。

iPhoneは見かけによらずかなり良い音がする

 オーディオマニアには数万円の電話機なんかに良い音が出るわけがない、という先入観があるようだが、数100万円~1000万円クラスのオーディオセットにiPodを直結してその音を聴いて見ると、多くの人は「こんなにまともな音がするのか」と驚く。変なノイズは聞こえないし、アタックの利いたピアノの立ち上がり、シンバルの縁に付けたシズルの余韻のある響きもクリアに再生してくれる。

 パソコンのヘッドホンジャックからオーディオ出力を取り出してオーディオセットにつなぐのとはわけが違う。パソコンからの出力を高級オーディオセットに接続して聞いてみると、サーッというノイズ音に加え、音自体に歪みや妙にカンカンした音に聴こえるものだ。さすがにこれは良い音とは言えないが、iPhoneやiPodからの音は相当高品位に聞こえる。もちろん、冒頭に書いたように、そもそも録音が悪い素材であったり、パソコンに取り込む時にいい加減な設定のサンプリングをしてしまうと、音にベールがかかったような音になってしまい、それをiPhoneで再生したところで良い音は出てこない。何でも同じだが、素材以上には良い音は出てこない。

 しかし、だ。ならば、オーディオマニアが泣いて喜ぶほどの音なのか、というと実はそこまでのクオリティーはない。ヘッドホンジャックから出て来るのはiOS機の中に収められたデジタルオーディオ素材をデジタル→アナログ変換した後、小さなオーディオアンプを通して増幅した音なのだ。どう考えても「パワー不足」なのは否めない。

 素晴らしいオーディオというのは静寂の中に水滴が一滴落ちる音をかすかに響かせるかと思うと、まるで本物のように雷鳴も鳴り響かせる。極端なほどの音量の違いを苦もなく再生するのが、高級オーディオセットだ。そうしたごくごく小さな音から鳴り響くオーケストラまでをうまく再生できることを「ダイナミックレンジが広い」と表現する。それから比べると、iPhoneのイヤホンジャックから取り出したケーブルを直結して鳴らすのは、ちょっと平板、と評価されることが多い。要するにダイナミックレンジが狭いのだ。