受験生がいる家庭では、この季節は緊張感がピークに達する。
春の訪れを前に、ピリピリとした雰囲気が張りつめている家庭は少なくはないだろう。
「ちょっと考えみてください。もし、自分の子供に障害がありながらも、試験を受けたいと言い出したらどうしますか」--。東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授はこう切り出す。
一般の受験家庭では普段考えないような問いかけに意表を突かれる。
日本マイクロソフトと東京大学先端科学技術研究センターは、障害のある児童、生徒が教育機関の入学試験において、ICTを利用しやすくするための取り組みを開始。その第1弾として、両者は共同で、支援ソフトウエア「Lime(ライム)」を開発。無償で公開を開始した。
肢体不自由や学習障害の児童、生徒たちが高校や大学などの入学試験において、合理的に配慮を受けられることを目標に開発したものだという。
デジタル機器は、障害者にとっても有効な教育ツールであり、授業などでもPCの利用が促進されている。しかし、定期試験や入試になると、その環境は大きく変わってくる。
例えば、上肢麻痺の生徒が、作文の試験でワープロの利用申請を行ったとしても、日本語入力ソフトウエアの漢字変換候補で漢字の表記が分かるため、一般の受験生との間に公平性を欠くという理由から、PC利用の特別措置が認められないという実態がある。
「高校時代はPCを使って学習してください、大学に入ったらまたPCを使って勉強してください。しかし、その関門ともいえる入試では使えませんというのが現在の実態」と、日本マイクロソフトの最高技術責任者である加治佐俊一氏は指摘する。