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 Mac OS Xの次期バージョン、「Mountain Lion」が突然発表された。従来、新しいバージョンのOSを発表する場合は世界中から開発者を集めて故スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者、当時)がそのOSが目指すものを示した上で、実際に動く姿をデモし、その後、守秘契約を交わした開発者だけに詳細を説明する、という手順を取ることが多かった。ところが、今回は全くアプローチが異なった。いきなり、その全貌を一般ユーザー向けに告知し、何ができるようになるのか、が細かく開示された(図1)。

図1 アップル(ジャパン)のサイトでもOS X Mountain Lionの先行告知が始まった。
図1 アップル(ジャパン)のサイトでもOS X Mountain Lionの先行告知が始まった。
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iPadでできることがMacでできる

 今度の新しいOSをひと言で言えば、iPadでできるようになった快適操作、特にiOS 5で大幅に改善された便利機能のほとんどがMacにも入ってくる、ということだ。

 実は現行のMac OS X Lionが発表された時、スティーブ・ジョブズは「iPhoneやiPadで培った便利で快適な使い勝手、機能がMacへ帰ってくる」と表現していた。例えば、書類をドラッグして動かす動作はiOSでそうなっているように実世界でつかんで動かす動作を取り入れるようになったし、ユーザーが複数のデバイスを使っている場合にどれかの端末で情報をアップデートしたら他のデバイスにも即座に変更が反映される、ファイルの保存動作は必要ない、フルスクリーンによるシンプルな操作性、ネットワークのみによるソフトウェア販売などなど。

 その発表は2010年10月に行われ、翌2011年の6月6日に開発者向け国際会議(Worldwide Developer Conference)で最終形がお披露目、7月にダウンロード販売開始となった。この流れからすると、iOSでできるようになったことのMacへの還元はLionで終わっているはずなのだが、実はLionの発売後にもう一つ大きなiOSのアップデート(iOS 5)があった。そのため、iOS 5の目玉機能の多くがLionに入りきらなかった(図2)。

図2 2010年10月、Mac OS X LionにはiOSで培ったノウハウがフィードバックされる、と解説するスティーブ・ジョブズCEO(当時)。
図2 2010年10月、Mac OS X LionにはiOSで培ったノウハウがフィードバックされる、と解説するスティーブ・ジョブズCEO(当時)。
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 そんなわけで、次期バージョンアップのMountain Lionはタイミングが合わずにLionに持ち込めなかったiOS 5の重要新機能をもう一度総ざらいして取り込むもの、と言える。そういう見方をすると、Mountain Lionへのアップデートはむしろ遅過ぎた感じがするもので、通常のアップデートで盛り込んでもらいたかったものもかなりある。