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 今回からしばらく、東京電力・福島第一原子力発電所の事故を巡る問題を考えていくことにする。

 昨年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は、大変ショッキングな出来事だった。事態はいまだ収束にほど遠い。今、毎日結構な量の放射性物質が事故を起こした原子炉付近から環境中に出ている。それは周囲の汚染状況を考えるとさほと多い量ではない(ひどい話だ)が、事故前に漏洩事故が起きていたら、記者会見で責任者が頭を下げるほどの量だ。そして、事故を起こした原子炉の完全な解体には数十年の月日と莫大な費用がかかることがはっきりしている。

 私もまた、3月11日の前は原子力発電について何か意見を持っているわけではなかった。事故が起きてから、かなりあたふたして勉強を始めた次第だ。今だって私には、原子力利用について賛成とも反対とも言い切ることはできない。私の限られた知識では、まだ賛成とも反対とも言えないのである。

 それでもはっきり言えることがある。正しい知識なくして、原子力について語れないということだ。そして正しい知識を知り、理解するためには、前提として正しい基礎教養が必要である。

 前提としての基礎教養とは何かといえば、ずばり高校の数学、物理、化学の知識だ。

 みなさん、胸に手を当てて考えてみてもらいたい。今やほとんどの方は高校卒業の学歴をお持ちだろう。では、次の言葉や事柄をやさしく他人に説明できるだろうか。すなわち、「指数、対数(数学)」「力とエネルギーの違い、質量数(物理)」「アボガドロ数、モル(化学)」「SI単位系(物理、化学共通)」――1つでも説明できないものがあって、なおかつ「自分は原発に賛成だ」「反対だ」という意見を持っておられるならば、あなたは高校レベルの基礎知識なしに、生半可な理解で原発について語っていることになる。

 高校レベルの知識があれば、もっと具体的に原子力について理解ができる。賛成するも反対するも、それら基礎知識を押さえてからでも遅くはない。

 「そんなことより、私は子供の健康が心配です」というお母さん方もおられるだろうが、高校で習うレベルの知識があれば、より子供を守れる。それでも高校で習ったことの復習をいやがる親というのは――私としては、そんな無情の親はいないと信じる。

 とはいえ、いちいち高校の教科書レベルまで戻っていては、なかなか興味を持続できないことも事実だろう。当連載では、原子力、原子炉について説明しつつ、必要に応じて高校レベルに立ち返った解説を挟んでいくことにする。

 高校レベルの数学・物理・科学を理解している方は、以下の2ページは飛ばしてもらってかまわない。4ページ目から、具体的な原子炉の解説に入ることにする。