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 以前このコラムに、俺の夢は初音ミクみたいなボーカロイドに落語ネタを織り込んだラブソングを歌わせて、秋元康先生のようにがっぽりと印税で儲けたいと書いたことがある。銭ゲバの俺は、実はそぉーとボーカロイドの最新ソフトを買って、誰もが知らないうちに「シンガーソングライター月影キャサリン」というペンネームで作詞作曲をするつもりでいた。

 しかし驚いたことに、この最新ソフト「VOCALOID3」には歌姫様がたくさんいて、どれにするか迷ってしまう。それに音楽音痴の俺がこのソフトを使いこなすことができるのか? 豚に真珠、いや白鳥に羽毛布団? とにかく慌ててはだめだと、この「VOCALOID3」公式完全マスターなるガイド本を先に読んで理解を深めることにした。

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 届いた本を読むと、最初は俺にもできそうな気がした。ピアノの鍵盤が左端にあり、それを目安にして音程を入れていくのだが、五線譜に楽譜を書き込むわけじゃないから、直感的に操作できそうだ。それぞれの音符には歌詞を入れていく。ここで、「流し込み」という操作があって、自動的にそれぞれの音符に字を割り当ててくれる。4拍子で「なんです? ご隠居さん、お出かけですか」を「春の小川」のメロディーに乗せてちょっと歌ってみてください。「はーーるのおがわは、さらさらゆくよ~♪」が「なーんです、ごいんきょさん、お~で~かけですか~♪」となる訳です。え、字だけじゃ分からないって? うーん、それは想像力でカバーしてみてね。

 さて音程と歌詞が入ればそれで終わりではない。これではよくあるロボットみたいな人工的な声になってしまう。この「VOCALOID3」が凄いのは、声をいろいろと編集できるところだ。例えば「なーんです」の「なー」の声の始まりを低い音から一気に高い音に持っていく。そして音の終わりをかすれさせて桑田佳祐さんみたいにする、なんてことができるのだ。ふんわりした声にするとか1音1音抑揚をつけることもできる。

 分かりやすく例えれば、撮った写真を元にして水彩画、油絵、水墨画に変化させる。次に、その色合いを、淡く、濃く、モノトーン、というように自分の個性で好きに選ぶ。そしてでき上がったものが、この世で1枚の自作の絵になる。と、まあこんな具合だ。

 あと凄い機能が、作った曲を元にして、違う歌姫にハモらせたりデュエットさせたりできることだ。ここまで本を読んで「よし、俺にもできそうだ」と鼻を膨らませてこのソフトを買おうと99%と決意した。しかし次のChapter5「伴奏や効果音に使う2種類のWAVトラック」を読んで愕然としたぜ。

 俺の作った歌はここまでは声だけだ。そこにドラムとかベースとか自分で入れたい楽器を選び、フォーク調か演歌調、ロック調などと選んでボタンをクリック。するとあら不思議、自分の作った声のバックにダン池田と東京オーケストラが流れる……そんなふうに思っていました。それが違うんです。

 この本には「なんらかの方法でカラオケや伴奏データを入手して歌と組合せればいいのだ」と書いてある。この「なんらかの方法」ってなんですか? 一例としてネットから取るって書いてあるんだけど、準備として「歌のテンポの確認と、歌がスタートするまでに何小節あるかのリサーチが必要」とある。もしテンポの情報がなければ、「メトロノームなどを使ってテンポがいくつに設定されているか調べる必要がある」。……持ってません、メトロノーム。それだけじゃない。伴奏データのイントロの前に無音の空白部分が入っていたら波形編集ソフトを使って空白部分をカットしなくてはいけないそうだ。波形編集ソフトは運悪く持ってないし、例え持っていても空白部分カットなんてできません、そんな高等テクニック。

 これで俺の夢はあっという間に終わってしまったと思った。