PR

 前回からの続きだ。核物質を集めて連続的な核分裂反応を起こす条件、すなわち臨界条件を思い出そう。必要なのは1個のウラン235原子が核分裂反応を起こし、出てくる中性子のうち1個だけが次の核分裂反応を起こすという状況だ。必要なのは十分な濃度・密度のウラン235のような核物質。そして安定して供給される、核物質と反応しやすい速度で移動している中性子だ。臨界時のエネルギーの出方は、核分裂で生成された放射性同位体からゆっくりと出る遅発中性子があるため、比較的マイルドだ。このような臨界を遅発臨界というのは前回説明した通り。

 しかし、遅発中性子は中性子全体の0.7%しかない。もしも残り99.3%の即発中性子、すなわち核分裂反応から直接ぽんぽんと素早く出てくる中性子だけで臨界が起きるようになったら――こちらは遅発臨界に対して即発臨界と呼ぶ――ドカン。容易に核爆発が起きることになる。

 遅発中性子の薄い床板を踏み抜くと、そこには即発中性子による核爆発の危険性が待っている。どうすればいいのか。

 一番簡単に思いつくのは、人がつきっきりで原子炉出力を監視して、人間が踏み抜かないように調節するということだろう。とはいえ、人間は必ず間違える生き物だ。そんなものを信用してドカン、というのは避けたいところである。

「じゃあ機械にやらせればいい」

 しかし機械だって故障する。機械が故障したら爆発というのはかなり問題だ。

第3回で説明した多重防護を取り入れればいいのでは。いくつもの機械を組み合わせて、あっちがダメならこっちという仕組みを作るんだ」

 かなりいい考えだが、外から働きかけて安全性を保つという方法には、どうしても「全部駄目になったらどうするの?」という懸念が残る。

「同じく第3回で説明していた固有安全性みたいなことはできないの」

 そう、勘所はそこだ。