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 6月11日(米国時間)、故スティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)の後を継いだ新CEOのティム・クック氏が、初めて司会を務める開発者向けイベント「WWDC 2012」のキーノートスピーチのステージに立った。やってくれました。これまでパソコンでは必須と考えられてきた多くの構成要素を大幅に切り捨て、常に新時代を切り開くアップルらしさが強く現れた新製品「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」が登場。アップルはスティーブ・ジョブズが作り上げてきた企業風土をさらに強靭なものに作り上げてきているという印象を強く世界にアピールした。

光学ドライブ、ハードディスク、Ethernet、FireWire 800ポートなし

 新しい「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」を見ると、あれ、これで十分なのか?と感じる人も多いだろう。その名の通り、この製品はプロが本格的に使いこなせるように設計された高性能機種だ。その割にはDVDやBlu-ray Disc(BD)ドライブが装備されていないし、Ethernetポートも付いていない。高速の外部ストレージをつなぐためのFireWireも、これまでの仕様より10倍速いと言われるUSB 3.0を装備している割には、それらしい端子がない。TwitterやFacebookで流れてくる一般の人たちのつぶやきから判断すると、これでは十分な仕事ができないんじゃないの、と思ってしまった人も多いようだ。中には、その薄さに着目し、「ウルトラブックに比べると薄さ・軽さはまだまだ。使いこなすのに不便」といった見当はずれな論評を加える一般新聞などがあったりして、その意味がよく見えていないようだ(図1)。

図1 新登場の「MacBook Pro Retineディスプレイモデル」のポートを説明するワールドワイドマーケティングのフィル・シラー上級副社長。ポート類はすっきり。Ethernetポートがなくても大丈夫か、と気になる向きもあるだろうが、ご心配なく(アップルがホームページで配信中のビデオから。現在はビデオPodCastでも配信している。1080pのハイビジョン版もダウンロードできる。http://itunes.apple.com/us/podcast/apple-keynotes-1080p/id509310064?mt=2l
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 スティーブ・ジョブズが製品開発で常に言っていたのは「とことんシンプルに、分かりやすく」というキーワードだった。昨今のパソコンにはDVDドライブ、特に最近ではハイビジョン映像を再生するためのBDドライブなどが必須のアイテムになり、ハードディスクは高速・大容量のものがこれでもかとばかり詰め込まれ、Ethernetポートは「ギガビット対応かどうか」がセールスポイントになっていたりする。しかし、新しい技術が次々に生まれ、ある機能を他の仕組みが代替するばかりか、それを凌駕する仕組みができたら、潔く過去の遺産を切り捨てる。今度の新製品にはそんな精神が見事に継承され、輝く結晶に成長した、という印象だ。