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 6月20日、東京電力の最終事故調査報告書が公開された。内容については、「東電の責任逃れだ」という声が強いが、この連載では、引き続き「誰の責任だ」「誰が悪い」ということを抜きにして、福島第一原子力発電所の事故を経過を追跡する作業を続けていこう。

 前回、津波が襲来して福島第一原子力発電所の非常用電源が、6号機のディーゼル発電機1基を除いて使えなくなったところまで説明した。2011年3月11日の東日本大震災発生時に運転していた1号機から3号機までの3つの原子炉は、外部の発電所からの送電、非常用ディーゼル発電機、直流の非常用バッテリー、そのすべてが使えない状態になってしまった。
 制御棒を挿入して核反応を止めたばかりの炉内では、放射性同位体を大量に含んだ核燃料が崩壊熱を発生し続けている(崩壊熱とは何かを忘れてしまった方は、第2回を読み返そう)。この熱を炉外に捨てていかなくては、どんどん炉内の温度が上がってしまう。
 津波襲来に続く全電源喪失の後、2号機と3号機では、電源不要の冷却システムである原子炉隔離時冷却系(RCIC::Reactor Core Isolation Cooling system)を手動で起動することができた。しかし1号機では、電源を使わずに炉内を冷却することができる非常用復水器(IC:Isolation Condenser)が止まってしまった。ICにつながる配管の電動弁が、電気が切れると閉じる設計になっていたからだ。ICとRCICについてよく分からないという方は第3回を読み返してもらいたい。

 ICもRCICも基本的な目的は時間稼ぎだ。すべての電源が使えなくなった時、破滅的事態を回避するために復旧の時間を稼ぐ装置である。ICは8時間、RCICは20時間の間だけ炉心を冷やす能力を持ち、その間に電源を復旧して次の冷却手段を起動し、最終的には通常時に使用する残留熱除去系による冷却に持ち込むというのが復旧の手順となる(残留熱除去系については第2回を復習しよう)。だからICはすべての電源が使えなくなった時には、何がなんでも動作しなくてはならない。ICが動かなければ復旧への道筋がつながらないのだ。
 が、福島第一原子力発電所一号機では、津波襲来の後、ICの再稼働は行われなかったのである。
 すべての電源が失われたという状況下で、発電所関係者が最優先したのはバッテリーによる直流電源の復帰だった。直流電源があれば計器が動き、炉内の情況が把握できる。手に入るバッテリーをかき集め、午後4時45分には、1号機の炉内水位が正常な水位から90cm下がっていることを確認した。