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 実に気の早い話だが、「ザッカーバーグ解任説」まで飛び出した。フェイスブック株低迷による騒ぎだ。

 アップル株が刻々と最高値を更新しているのとは対照的に、フェイスブック株はどんどんと値を下げている。米国時間月曜日(2012年8月20日)の時点では20.01ドル。IPO時の38ドルから50%弱も下がってしまっている。一時は、半分にまで落ち込んで、想定外の出来事に、いったいどうなるのかという空気がただよった。

 株価の低迷は、フェイスブックのストックオプションのロックアップ(公開後一定期間持ち株を売却できないとする規制。上場する会社と株主などが契約で決める)期限が切れて、投資家や社員らが持ち株を売り始めたことも影響している。だが、ロックアップ期限後に彼らが株を売って、ミリオネアーがたくさん生まれるのはシリコンバレーでは当たり前のこと。期待されている企業ならば、それでも株価は上がっていく。

 従って、これだけ株価が下がるのは、何となくフェイスブックの将来を見切った社員や関係者がさかんに株を売っているということだろう。それを裏付けるような動きが、投資家ピーター・シールのフェイスブック株売却である。

 シールはフェイスブックの最初の投資家で、シリコンバレーでは有名な起業家だ。ペイパル共同創業者として、巨万の富を築いている。ザッカーバーグのフェイスブック創業を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』にも登場した。一緒に同社を創業したザッカーバーグの学友を追放して、彼の持ち株を取り上げてしまったことが描かれている。

 そのシールは、ロックアップ期限が切れるやいなや2230万株を売却して4億ドルの現金に替えたという。手元に残っているのは130万株だけというから、ほとんどを売り払ったことになる。投資家として機敏なシールとしては、ともかく株価がいま以上に下がる前に売ってしまおうということなのだろうか。金に困る身分ではないのだから、それ以外の理由は見つからないのだ。

 さて、そこで早々とザッカーバーグの去就を取り沙汰するのは、いかにもアメリカである。株価の低迷もさることながら、フェイスブックの成長率も鈍化している。それでもまだまだ人気のサービスであることは確かなのだが、IPOが過ぎるとフェイスブックへの熱狂もどこか冷めてしまったところがある。それと共に、だいたいザッカーバーグがいるのがよくないのではという短期的なイライラが噴出しているようなのである。

 公開企業となると、それなりの経営手腕が必要となって、ザッカーバーグのようなテクノロジーおたくでは力不足、というのが、そうした一部の見方だ。確かに、テクノロジー企業ではおたく創業者がすぐにベテラン経営者にとって代わる例は、無数にある。グーグルも創業者がトップに就いたのは、ごく最近のことだった。

 だが、ザッカーバーグなしにはフェイスブックはあり得ないと見る人々が大半だ。こういう人々は、スティーブ・ジョブズを追い出したアップルが、やはり最終的には彼を必要としたことに重ねて、創業者でなければ分からないその会社の「DNA」といったことに言及する。ザッカーバーグ自身がフェイスブックを行く先を左右する決定権をかなり握っているので、彼を追放することは簡単ではない。

 ソーシャルネットワーク熱の冷め方の速度がどうなるのかによって、彼の去就は決まるだろう。もうひとつは、人々の不信感をどれだけ払拭できるかだ。フェイスブックには、面白いけれど「ずるい会社」という印象がずっとつきまとっている。人気も、危ういバランスの上に成り立っているのだ。

 これまでは運と話題のおかげもあって成長してきたが、ここからが経営本番なのだ。ザッカーバーグのお手並み拝見というところだろう。