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 電子書籍の価格がまた変動しそうな気配だ。

 先週、連邦司法省(DOJ)がアップルと出版社に対して、エージェンシーモデルで電子書籍を販売するのは価格操作にあたり、独占禁止法に違反していると判断を下したからである。

 この騒ぎは、2010年から続いていた(関連記事)。アップルが最初のiPadを発売するに先立って出版各社と申し合わせ、電子書籍の価格を、オンライン書店ではなく出版社が定められるもの(「エージェンシーモデル」)にしたことに端を発している。

 アメリカでは、プリント書籍も大半が卸売り業者や流通業者が買い取り、それを書店に売るという方法を取る。これはホールセール(卸売り)モデルと呼ばれる。このモデルでは、書店側が、地域の客や自分たちのプロモーションに合わせて自由に販売価格を設定することができる。売れ残りそうな本はバーゲンにしたり、クリスマスシーズンになるとプレゼントに最適な本を前面に出して、一斉に値引きしたりといったようなことをやるのだ。

 電子書籍に本格的に一番乗りしたアマゾンは、このホールセールモデルを踏襲して、電子書籍に独自の値段を付けていた。それも10ドルを切るすごい値引きである。アマゾンがキンドル発売を開始した2007年から、ほとんどの電子書籍は9.99ドルという激安価格で売られていたのだ。

 これに対して、あまりに激安で電子書籍が売られると、プリント書籍の売り上げに打撃を与えると怖れた出版社と、Kindleを打ち負かしたいアップルが手を結び、エージェンシーモデルを採用。iPadとの競合を楯に、出版社はアマゾンにもこのエージェンシーモデルの採用を迫ったのだった。

 その結果、9.99ドルを享受していた消費者の前に現れたのは、12.99ドルとか14.99ドルという値段。ここ最近、価格は下がるものだと思っていたのに、逆に上がるという現象に遭遇したのである。一部のベストセラー本を除いて、だいたいの電子書籍はこの値段に落ち着いていた。

 その2010年からほぼ2年たった今年春に、DOJ がアップルと出版大手5社を訴え、そのうち3社(サイモン&シャスター、ハーパーコリンズ、アシェット)がこのたび和解したわけだ。ただアップルと残り2社(ペンギン、マクミラン)はこれに加わらず、価格協定を結んだことを否認して控訴しそうだ。

 この判決で、アマゾンの電子書籍はまた値段が下がっているのだが、価格競争はここから再び始まりそうだ。アマゾンに対抗して、アップルも値段を下げているからである。確かに今10冊ほどの価格を比べてみたら、両社の値段はぴったり同じだ。和解していない出版社も、控訴で勝つまで高止まりさせるわけにはいかず、やはり価格を下げるだろうと言われている。この価格競争には、グーグルやバーンズ&ノーブル、コボも関わってくるだろう。

 電子書籍の価格競争は、オンライン書店だけに留まらない。ベストセラー本を中心に扱うウォルマートやターゲットなどの量販店も、電子書籍の価格に対抗してすごい値引きをすることもある。「分厚くて大きいプリント書籍なのに、この値段?」みたいなバーゲンだ。

 というわけで、またもや最安の価格を争う変動時代がやってくる。消費者にとっては天国、出版社にとっては悪夢、アマゾンとアップル、グーグルにとっては戦場。走り出してから考えているアメリカの電子書籍市場は、一転、二転、三転の変貌を、まだまだ繰り広げそうなのである。