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 2012年11月10日に東京学芸大学で「教育フォーラム2012」が開催されました。これは、同大学が小金井市、小平市、国分寺市の教育委員会や学校と連携協力して進めているコンソーシアムが毎年開催しているもので、今年で9年目を迎えます。今年は、「ICTを活用した21世紀の授業を考える」というテーマで、国内に加えて海外の実践者を招待して開かれました。日本からは小平市の3つの小学校、学芸大学附属高等学校の先生方が、海外からは北京市、上海市、香港、テグ市(韓国)の先生方が参加しました。今回は、中国の先生方による発表から見えてきたことをお話ししましょう。

1人1台のiPadで“合奏”する音楽の授業(北京市)

 北京市の豊台区師範学校附属小学校の温建芳先生は、小学校4年生の音楽の授業実践を紹介しました。児童が1人1台のiPadを使って演奏や伴奏を行うというものです。ノートPCではなくiPadだという点が興味深かったです。

 音楽の授業ですから、本物の楽器を使えばよいようなものですが(実際、会場からもこのような質問が出ました)、iPadはいろいろな楽器に“変身”する上、机の上に置いても場所を取らない長所があります。ドラム、シンバル、ピアノなど、児童が両手の指を上手に使ってiPadの画面をタップしながら演奏している様子がビデオで紹介されました。温先生はオーケストラの指揮者よろしく、手を大きく振ってみんなの演奏をまとめていました。

図1 iPadの中の小さな楽器で上手に演奏するところ(発表のビデオより)
図1 iPadの中の小さな楽器で上手に演奏するところ(発表のビデオより)
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 温先生の話では「メディアをどう使いこなすか」がポイントだということです。実際、iPadにはいろいろなアプリケーションが用意されていて、ここで利用された「Grand Band」は楽器演奏のシミュレーションができる機能を持っているわけです。温先生が指摘したICT活用のメリットは、子どもの興味の高まり、個性の伸長、聴く力の向上、歌唱力の向上(楽譜が読めるようになる、正しい音程を身に付けられる)というものでした。

 ビデオでは、子どもたちはどの国も同じで、机の間をウロウロしながら友だちの演奏をのぞき込もうとしていますが、教室は実に楽しげな雰囲気に包まれていて、だれ一人授業に飽きている子はいないようです。

図2 子どもたちは実に楽しそうな顔を見せる
図2 子どもたちは実に楽しそうな顔を見せる
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 確かに子どもたちの演奏にはそれぞれ個性が見えるなと感じました。個性を引き出すことはとても重要なテーマで、音楽や美術など芸術系の学習においてはこれをどのように解決するかが重要です。ICTが子どもたちの演奏技術を補助し、それによって子どもたちに余裕の出る分、個性を発揮することが可能になるのだと思います。

 後半で、友だちの合奏に合わせて何名かの子どもたちが自由に踊るという場面も紹介されました。奏でられる曲のイメージを自分たちで解釈し、個々人が体で表現するというものです。小学校4年生の踊りですから、表現活動というほどのものではありませんが、個性を引き出すきっかけ作りができると思います。

図3 何名かの子どもたちが教室前方に出てきてみんなの合奏に合わせて踊り始める
図3 何名かの子どもたちが教室前方に出てきてみんなの合奏に合わせて踊り始める
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 温先生の話では、この実践の前に行った調査では、譜面を読める子どもが全体の3分の2程度だったが、この実践の後の調査では100%の子どもが譜面を読めるようになったとのことです。ただし、北京市の小学校が全てこのような環境にあるわけではなく、この小学校は北京市から研究指定を受けているのでこのような取り組みができるとのことでした。このような先進的な試みが、北京市の中で、今後どのように広まるかが注目すべき点でしょう。

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