米ヒューレット・パッカードが、Android搭載の7型タブレット「HP Slate 7」を発表した。
米国市場では今年4月から発売される予定であり、日本での発売については、現時点では未定。しかし、日本ヒューレット・パッカード プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括の岡隆史・副社長執行役員は、「HP Slate 7の国内投入については、前向きに検討していきたい」と、今後の国内発売に期待を抱かせるコメントを発する。
HP Slate 7は、同社が戦略的製品と位置づけるコンシューマ向けのAndroidタブレット。価格は169ドルからと、価格面でも同社の本気ぶりが感じられる製品だ。
基本スペックは、CPUには、Cortex-A9(デュアルコア1.6GHz)を搭載。8GBのストレージを搭載。7型の液晶ディスプレイは、1024×600ドット表示に対応。OSはAndroid 4.1を採用している。Beats Audioによる高音質化にも取り組んでおり、その点でも従来のタブレットとは強化ポイントが異なるといっていい。
本体サイズは幅116×高さ197×厚さ10.7mm、重量は約369gと、手のひらサイズの端末となっている。
この製品が「戦略的」とされるのは、ノキアから米ヒューレット・パッカード入りをしたアルバルト・トーレス氏が率いるモビリティ事業部門が開発した第1号製品であるのも一因だ。
つまり、これまでのヒューレット・パッカードのPC事業などとは一線を画す形で開発された製品であり、今後、この製品を切り口に、ヒューレット・パッカードの新たなモビリティ製品の方向性が打ち出されることになる。
岡副社長も、「日本における今後のコンシューマー事業の取り組みにも変化を及ぼす可能性がある。競争力の高い製品であり、これまでとは違うマーケティング戦略を打ち出すことで、継続的な成長へとつなげていきたい」とする。
販売ルートについても、コンシューマー向けモビリティ製品の良さを生かせる方向で検討していきたいという。
とはいえ、この製品は、モビリティ部門単独の製品ではありながらも、世界最大のPCメーカーであり、世界最大のプリンターメーカーであるヒューレット・パッカードの総合力が随所に見られている。
例えば、HP Slate 7は、「HP ePrint」による印刷機能を搭載しているが、これもヒューレット・パッカードならではのものだ。
HP ePrintは、プリンターに割り当てられたeメールアドレスに、ファイルを送るだけでプリントできる機能。HP Slate 7からもダイレクトにプリンターにデータを送信すると自動的に印刷するというものだ。
同社は、昨年、プリンティング事業と、PC事業を一本化。日本でも、昨年8月にプリンティング・パーソナルシステムズ事業として、1つの部門に事業を統合している。
統合の成果としては、営業活動やマーケティング活動において、一部表面化しており、「ヒューレット・パッカードのPCを使用しているユーザーが、ヒューレット・パッカードのプリンターを使用しているとは限らない。双方のユーザーに対して、新たな製品提案を行っている」(岡副社長)というように、クロスセルによって、それぞれに新たな顧客を開拓できるという成果が生まれている。
一方で、開発という点では、PCとプリンターの上位製品では、「ENVY」という統一ブランドで展開したり、今回のHP Slate 7のように、HP ePrint機能を搭載したりといった動きが見られている。
その点では、HP Slate 7も、PC事業とプリンター事業の統合の影響が及んだ製品だといっていいだろう。
だが、根本的な部分で見れば、事業統合のメリットは、まだ表面化していないといえる。
岡副社長も、その点を認めながら、「製品開発には約2年を要する。統合効果をもとにした製品が出てくるのは、今年後半になるだろう」とする。
まだ、その方向性などについては明らかではないが、プリンターとPCの組織を統合させた同社ならではの体制が、どんな製品を生み出すのかが今から注目される。