ちょっと古い話。この連載の企画を検討していたころ「マッシュアップ」がキーワードの1つとして挙がっていたことがある。ちょっと懐かしい響きもするマッシュアップとは複数のデータや機能を組み合わせて独自のWebサイトを構築することであり、当時はとても画期的なことだった。その名を冠した「Mashup Awards」も2012年で8回目を迎えたのだから、けっこう時間が過ぎて成熟したように思う。
今では複数のWebサイトのAPIを組み合わせて新しいWebサイトを作ることなんてたやすい……とまで言うと語弊があるかもしれない。だが制限時間内に新しいWebサイトの試作品を構築し、腕を披露し合う「ハッカソン」イベントもカジュアルに開催されるようになっている。条件さえそろえば一両日程度で新たなWebサイト、あるいは試作品程度なら完成させることは可能だろう。
ただし社会インフラとして活用できるほどのWebサイトとなると、まだそう簡単ではないようだ。最近「Developers Summit 2013」にてオープンデータとハッカソンの現状と課題についての議論を目にする機会があり、あらためて現状について共有しておきたい。
オープンデータとは何か。食材がないと料理が作れないように、データがないとWebサイトは作れない。「どのようなWebサイトを作るか」を考案する以前に、データが利用可能な形式で公開されている必要がある。そうしたデータ開示を推進する動きを「オープンデータ」と呼ぶ。
例えば電力使用量のデータでを考えてみよう。東日本大震災以来、さまざまなポータルサイトで節電の呼びかけとともに現在の電力使用量が表示されるようになった。Webサイトはじめスマートフォンアプリなど、それぞれ独自のデザインで表示できるのはデータがAPIで提供されているからである。ただし当初は電力会社が提供するデータはPDFファイルのみだった。せっかくデータが公開されていても、PDFではプログラムは読み取れない。そのため、人力でデータを解析し加工していた時期もあるそうだ。今ではデータはプログラムやコンピューターで利用可能な形式(API)で提供されているため、現在のように多彩なWebサイトやアプリで利用できるようになったというわけだ。