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 前回のハンガン中学校に続いて、今回はイテウォンにあるイテウォン小学校のお話をします。イテウォン小学校は、韓国で2011年に開始された「スマート教育推進戦略」においてパイロット校的な存在。全国に先駆けて「スマートラーニング」というコンセプトで施設整備された小学校です。このような学校はソウル市内で小中高それぞれ1校ずつが設置され、小学校としてはソウル市はもとより、韓国において初めてでした。

鳴り物入りで始まったスマートラーニング

 イテウォンという地域は異国情調あふれる街並みが有名で、韓国とは思えない建物が軒を連ねています。近くにヨンサン米軍基地があり、アメリカ人をはじめとしてさまざまな国の人たちが生活しています。イテウォン小学校の児童の12%は外国籍だそうです。

小学校から米軍基地の一部(手前の低層建築物)が見える
小学校から米軍基地の一部(手前の低層建築物)が見える
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 ユ・ジェースン校長によると、「スマート教育推進戦略」における研究指定校として同校は、学習者用デジタル教科書、オンライン学習、クラウドシステムなどの活用、教員養成などが求められているとのことです。現在は18クラスに300名の児童が在籍しており、彼らが使うためのPCとして、「パッド」と呼ばれるタブレットPC(メーカーはLGとサムスン)が100台、そのほかに、ノートPC25台とコンピューター室が1部屋用意されています。

コンピューター室は意外にシンプルで、可搬性のあるPCをそろえている
コンピューター室は意外にシンプルで、可搬性のあるPCをそろえている
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 学校には“1人1台”が整備されているわけではなく、自分のPCを持参する子も3割くらいはいるようです。

 2011年6月に研究指定校としてスタートして以来、2年間で600名の管理職(校長や教頭)が研修に訪れ、「スマートCEO(最高責任者)」としての教育を受けたとのことです。韓国の学校には約3000名の管理職がいるそうですから、その20%がイテウォン小学校で「スマート教育推進戦略」の研修を受けたことになります。

 韓国の人口5000万人のうち3000万人がスマートフォンを使っているそうで、一番使いこなしているのが子どもたち、次が若い先生と保護者で、教員の世界では年配の先生になるほど使いこなせない人が多くなり、一番ダメなのが管理職だというのです。だからこそ、ICTを活用した教育改革を行うには、真っ先に管理職の意識改革の研修が求められたのでしょう。このような全国規模の研修をトップダウンで行えることが韓国の強みです。ちなみに、イテウォン小学校を訪れるのは韓国の先生方だけではなく、世界中から視察団が訪れます。

海外の視察団が持参した土産の陳列台の前で語るユ校長
海外の視察団が持参した土産の陳列台の前で語るユ校長
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