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 文部科学省の「学びのイノベーション事業」では、教員ではなく児童・生徒が利用するデジタル教科書、いわゆる「学習者用デジタル教科書」の実証研究が進められています。学習者用デジタル教科書は、総務省「フューチャースクール推進事業」で整備された“1人1台”のタブレットを活用する目的で導入されました。

 目下、「学びのイノベーション推進協議会」の下に設置されたワーキンググループにおいて、その標準化の検討が進められています。今回は、このような流れの中、昨今の学習者用デジタル教科書について思うことを述べてみたいと思います。

紙の教科書とデジタル教科書

 紙の教科書がデジタル化されることで、児童・生徒にもたらされるメリットを考えてみましょう。単純なところで「子どもたちのカバンが軽くなる」という点があります。シンガポールや韓国ではこの点を指摘する関係者が少なくありません。実際、韓国の子どもたちへの「e教科書」の無料配布は、教育環境の格差を是正するという趣旨がありましたが、カバンを軽くするという2次的な効果も挙げられています。

 せっかくデジタル化したのだから、紙の教科書の単なるハードコピーだけではもったいないということで、さまざまな“しかけ”が埋め込まれているのも利点です。インターネット上の情報にアクセスするリンクを張ったり、理解を助けるアニメーションを入れたり、ドリルタイプの個別学習機能を付けたりといった工夫がなされています。

 一方で、紙の教科書の方が優れている点もあります。例えば、紙の教科書では、ページを"めくる"という感覚的な動作が可能です。ときには複数のページをまとめてめくって手際良く目的のページにたどり着く、“感覚的検索”ができます。

 この作業は、学習において意外と重要なものです。感覚的検索をするには、教科書全体の構成をイメージとして把握しておく能力が必要で、それを養うにはデジタル教科書より紙の教科書の方が適しているのです。

 デジタル教科書には、“文字単位検索”によって、知りたい用語がどこにあるかを簡単に調べられるという利点があります。ただ、子どもの学齢にもよりますが、学習活動においては、“文字単位検索”よりも“感覚的検索”を大切にしたい気がします。もちろん、デジタル教科書でも“感覚的検索”は可能でしょうが、そのためには、デジタル教科書にかなり慣れる必要があると思います。

 ふと、デジタル教科書や電子書籍では「速読」や「斜め読み」という技が使えるのだろうか、と考えることがあります。筆者はそのような能力を持ち合わせていませんが、近い将来、その技を持つデジタルネイティブが増えてくるのかもしれません。そうなったら、デジタル教科書の方が紙の教科書よりも便利なぶん、ニーズが高まることでしょう。