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 俺の創作落語に「江戸前カーナビ」という話がある。なぜかカーナビに江戸時代の車屋さんが宿ってしまい、道をナビしてもらうと、「江戸っ子が引き下がれるかい!」と言ってバックを拒否したりする威勢がいいカーナビの落語だ。まあ実際、こんなカーナビがあったらうるさくてスイッチ切っちゃうけどね。

 俺は目が悪いので免許証は持ってない。若い頃、実家の自転車屋を親父が次男の俺に継がせるために、無理やり千葉の合宿免許場に送り込まれたことがあった。そこでは最短2週間で免許が取れるのだが、俺は2カ月近くかかり、みんなから「寮長」と呼ばれるようになっていた。どうにか免許は取れたのだが、車幅感覚が覚えられずに壁にぶつけるわ、前の車に追突するわ、シャッターを突き破るわで、免許を取り上げられてしまった。なので車に乗るときはもっぱら後部座席の男である。釣りなどで彦いち隊長の車に乗るときは、くだらない話をしたり爆睡したりで目的地に着いていた。

 ある日、かみさんが「子供の病院とか習い事の送迎で車が欲しい」と言ってきた。確かに小学生の娘と息子がまだ低学年とはいえ、電動自転車の前後に乗せることはできない。娘は自分の自転車に乗るが、小学2年の次男は「僕の夢は肉になることです」と作文に書くほどの肉好きのおでぶちゃんである。この小学生離れした巨漢を自転車の後ろに乗せたまま、前かごにはかみさんが自分で飲む缶チューハイを20本も入れたりしら、そりゃ重いでしょう。特に雨の日は最悪で、雨がっぱを着て道を走ると、前がよく見えずず危ない思いを何度もしているらしい。

 しかたないので車を買うことにしたが、かみさんもここ10年、ほとんど運転していない。しかし、かみさんはもともと東京郊外の交通の便の悪い場所で生まれ。20歳を過ぎたらすぐに車を買い、結婚するまでブイブイ都内を走り回るくらい運転が好きだから、感はすぐ戻るという。

 なので感が戻るまでは傷を付けでもよいように、安い中古車を買うことにした。しかし、かみさんは絶対条件として「バックモニターとカーナビ」がなきゃ嫌だと言う。ネットであれこれ探し、やっと条件に合った7人乗りの車を安く見つけて即購入。その時にサービスでカーナビのDVDを最新の情報に変えてくれた。さあ、これでどこへ行くにもカーナビ様の言う通りにすれば楽勝だと一安心。

 しかしこれが間違いだった。