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 2013年6月14日、第2次安倍内閣の新たなIT戦略として「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定された。2020年までに世界最高水準のIT利活用社会を実現し、その成果を国際展開することを目標としている。

 政府は、2001年にIT戦略本部を設置して「e-Japan戦略」を策定。その後2003年に「e-Japan戦略II」、2006年に「IT新改革戦略」を策定して教育分野を含むIT社会の実現を目指してきた。しかし、世界一になるどころか、逆に諸外国に遅れる結果となった。政府はその原因の一つとして各省庁がバラバラだった点を挙げ、今回は「IT総合戦略本部」と名称を変え、各省庁の連携を強化している。

1人1台の端末配備が目玉

 教育分野では、まず教育環境自体のIT化を掲げている。基本的には、今までのIT戦略の取り組みを踏襲し、単に繰り返しているだけにも見えるが、地面を固めることは最も大切なことだ。その上で、「1人1台の情報端末の配備」が大きな目玉になっている。

 宣言の中では、「1人1台の情報端末配備、電子黒板や無線LAN環境の整備、デジタル教科書・教材の活用等」と、今の時代に合わせた記述がある。ただ、これを実行するのは大変なことだと感じている。筆者の勤務校でもタブレットを13台購入したが、既存の無線LAN環境では、教師の端末と児童の端末とで画面を共有する際にスムーズにはいかない。1人1台の端末を全校で使うとしたら、十分な無線LAN環境の整備も必要で、相当なコストになる。端末費を含めると、2009年に行った“100年に1度”と言われた文部科学省の超大型補正予算をもう一度やるくらいの覚悟が必要だ。

学習指導要領にICT活用を

 「教える側の教師が、児童生徒の発達段階に応じたIT教育が実施できるよう、IT活用指導モデルの構築やIT活用指導力の向上を図る。そのため、指導案や教材など教師が活用可能なデータベースを構築し、(中略)積極的に活用する」という記述もある。しかし、指導案や教材を用意すればよいというものではない。

 というのも、既に相当数のコンテンツがインターネットで公開されているが、広く使われているとは言えない。理由は簡単で、ICTに関して、その指導も使用も教員の義務になっていないからである。学習指導要領には情報活用能力の育成やICT活用場面が埋め込まれているのだが、明示されていないので関心がないと気が付かない。

 従って、本気で普及させたかったら、やることは一つ。学習指導要領に明記することである。学習指導要領は10年ごとに見直すが、途中で修正された例もある。今からでも十分間に合う。ぜひ考えてほしい。

 「2010年代中には、全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校で教育環境のIT化を実現するとともに、学校と家庭がシームレスでつながる教育・学習環境を構築する」という部分についても注目したい。

家庭学習の広がりに期待

 今は各家庭のICT環境が千差万別だからパソコンを前提にした宿題や課題は出せないのが実情。一方、1人1台の端末を配備すれば、端末を家庭に持ち帰り、家で個人の学力に合わせたドリルを行うとか、課題の続きを行うとか、ビデオ会議でグループでの協働学習を続けるとか、学習の幅が大きく広がる。家庭学習の定着にもつながるだろう。しかも、それを学習履歴として教員が把握できるから、学校での指導にも生かせる。ただし、家庭でもネットに接続できる環境が必要になる点は忘れてはならない。端末の配備だけでは不十分なのだ。

 新たな課題も次々と出てくるが、今回のIT戦略こそ、ぜひ実現してほしいと願うばかりである。

 余談になるが、今は総務省も文部科学省も教育分野に関しては「IT(情報技術)」ではなく「ICT(情報通信技術)」と表記している。コミュニケーションの「C」が入るのだ。今回の宣言では全体の表記を統一したのだろうが、ここは断りを入れてでも「ICT」にこだわってほしかった。