唐突ですが、ドッキングステーションがちょっと気になっています。「ドッキング(Docking)」というと、なんだか宇宙開発のようなイメージがありますが、「Dock」とは、波止場や埠頭、船渠(いわゆるドック)を指し、Dockingは、「ドック」に入ることを意味します。ドッキングは「入渠(にゅうきょ)」とも訳されます。軍艦を集めるゲームをしているから気になるのではなくて、USB 3.0や薄型ノートの世界的な普及でドッキングステーションが「はやる」ような気がしているのです。
これまで、自宅やオフィスなどで、あまり持ち運びにこだわらずに使うといった場合、ノートパソコンでも比較的大きなきょう体のものが使われることが多かったと思います。タブレット型も増え、インテルがUltrabookを提唱してクラムシェル型のノートパソコンも薄型化してきたため、これまで搭載可能だった端子や周辺機器を搭載できなくなってきました。
例えば、イーサーネットは、規格上、端子の大きさが1つしかなく、レセプタクル(本体側の端子。接栓座とも呼ばれる)の高さを一定以下にはできません。最近では、本体の厚みがこのサイズとほぼ同じぐらいになってしまったために、このレセプタクルを内蔵することができなくなってしまいました。このため、イーサーネット端子を持たない機種が増えています。
ディスプレイ端子は、薄型で小さなサイズもあるHDMIやDisplayPortなどが普及しています。しかし、必ずしも接続先のディスプレイやプロジェクターが同じ種類の端子を備えているとは限らず、変換アダプターが追加で必要になることが少なくありません。
こうした問題を解決してくれそうなのが、さまざまな種類の端子を備える「ドッキングステーション」なのです(メーカーによっては「ポートレプリケーター」や「ベース」などの名称を使うこともあり、若干定義が違っているのですが、ここではドッキングステーションと総称することにします)。ドッキングステーションとパソコンとは1つのケーブルで接続できるので、外出前や帰宅後の接続が簡単になります。
しかも、高速にデータ転送できる汎用のUSB 3.0の普及は、ドッキングステーションをメーカーオプションからサードパーティーの周辺機器にしてくれそうです。イーサーネットやディスプレイ用アダプター、増設のUSB端子(ハブ)などは、すべて汎用品なので、デバイスは簡単に手に入り、ドライバー供給の問題もありません。そうなると、いかに便利なものを提供するかというアイディアや企画力が問題になり、同じメーカーの製品だからという「安心感」や「ブランド」の影響はそれほど大きくならないからです。周辺装置を専門とするメーカーからは、昨年あたりから、いくつか「ドッキングステーション」を名乗る製品が登場しはじめています。薄型のUltrabookなどがさらに普及すると、さらに製品が出てきそうです。
ドッキングステーションとなると、大きくて、自宅などの固定環境用という考えもありますが、例えば、出張のときにホテルなどで利用するような場合に使えるような軽量のものも想定できます。USBハブや各種のアダプターなどをバラバラに持ち歩くよりも、1つにまとめられるならその方が取り扱いも楽だし、便利だからです。底面などに付けられた専用コネクターを使うドッキングステーションと比べると、USB 3.0接続なら、形状はどんなものでいいし、本体との配置も上下に置くなどにこだわる必要がありません。
いまなら、イーサーネットアダプターやサウンド、ディスプレイ端子に加え、キーボードやマウスを接続するUSB端子があればいいでしょうか。あるいは、メモリーカードスロットや、他のデバイスの充電用に、複数のUSB端子(必ずしもUSB 3.0である必要はない)があった方がいいかもしれません。USB端子は、キーボードやマウス、USBメモリーなどの接続を考えると3つ程度はほしいところ。さらにスマートフォンやタブレットなどの接続や充電を考えるとさらに1~2個はあると便利です。
筆者が海外取材のときにホテルなどで利用する場合、持っていた4端子のUSBハブが全部埋まることは珍しくありません。以前紹介したギガビットイーサーネット付きのUSBハブは、端子が3つしかなく、あと1つほしいと思うことが結構あるので、個人的には4端子がミニマムなのかもしれないと考えます。