読者のみなさんには、なじみの店があるだろうか。よく行く居酒屋やバー、レストラン、定食屋などがある人は多いと思う。そこで出される食事や飲み物が楽しみで通うのはもちろんだが、実は店長や店員とのちょっとしたおしゃべりが面白くて通っている人も少なくないだろう。では、“なじみ”の自動販売機と言われたら、どうか。「なじみ?」と頭に疑問符が浮かぶかもしれないが、自販機で飲み物やタバコを頻繁に買う人なら、「なじみの自販機(つまり、よく行く自販機)」がある人も多いだろう。そんななじみの店(自販機)に“店長”がいたら、そこで会話が生まれても不思議ではないのかもしれない。
日本コカ・コーラは2013年10月、スマートフォン向けのアプリ「話せる自販機 GEORGIA」の提供を開始した(写真1)。名前の通り、自販機と“話せる”ことを売りにしたスマホアプリである。
同社の基幹ブランドであるコーヒーの「GEORGIA(ジョージア)」における、2013年秋冬キャンペーンの一環。テレビCMにも出演している女優の永作博美さんなど、6人の店長とスマホアプリを介して「会話が楽しめる」というものだ(写真2)。
6人の店長をそろえた、今回の話せる自販機アプリ。その反響はいかなるものか。アプリの配布開始から約1カ月が経過した2013年11月中旬、筆者は自分のスマホにもアプリを入れたうえで、日本コカ・コーラを訪問した。
結論から言うと「アプリの利用は寒くなるちょうどこれから」との答えだった(アプリの利用は2013年12月27日まで)。自販機で販売するコーヒーの書き入れ時は、寒くなる11月後半以降。確かに寒い季節になると、温かい缶コーヒーが恋しくなる。
日本コカ・コーラはこの秋冬に「ほっとジョージア」を合言葉に、プロモーションを展開中。「ほっと」とは、ホットコーヒーのほっとであると同時に、ほっとするという意味を掛けている。
どうしたら、自販機を「心からほっとできる場所」に仕立て上げられるか。今回のスマホアプリは、そこから企画がスタートしたという。
飲料メーカーにとって、定価販売が基本である自販機は非常に重要なチャネルだ。スーパーマーケットでは特売の対象になりやすい清涼飲料を、自販機なら自分たちの思い通りに販売できる。全国に約98万台もの自販機を持つコカ・コーラの販売網は巨大だ。
ただし、自販機の前には、スーパーの売り場のように店員が立っているわけではない。その場所でどうやって、人がほっとできるようにするか。日本コカ・コーラは、自販機を『店舗』に見立て、そこにいる仮想の“店長”とのインタラクティブなやり取りを提供することで実現できないかと考えた。
そこで登場したのが今回のアプリ。通常、自販機でプロモーションを展開する場合、自販機の本体にステッカーやPOP(店頭販促)を貼るのが一般的だが、それだけだと“店長”との会話は生まれない。そこでスマホアプリが出てきたというわけである。