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 特定秘密保護法(特定秘密の保護に関する法律)が、2013年12月6日に参議院本会議で可決、成立した。知る権利が妨げられるとか、秘密の範囲が不明確であるとか、いろいろな意見があった。国家の機密については今後もいろいろと考える必要があると思うのだが、それより個人の秘密は守られているのかが気になってきた。

 「007」ジェームズ・ボンドのようなスパイは、昔から小説や映画になってきたのだから、国家間での諜報活動は当たり前の話である。けれども、尖閣諸島の中国漁船衝突映像を流出させた元海上保安官は、外国のスパイに情報を渡すのでもなく、某テレビ局に情報を送ってはみたけれど放送もされず、結局、普通の人々が使うYouTubeに漁船衝突というよりも攻撃のような動画をアップして、その映像は瞬く間に国民に広がった。さらに元CIA職員のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏が、米国政府の個人情報収集を告発すれば、国家機密の漏えいに命を懸けるジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏が率いるウィキリークスが支援を開始して、米国がドイツ首相の電話を10年以上も盗聴し続けていたなんて疑惑まで浮上する始末である。

 昔はスパイがそっと権力者に機密を渡していた諜報活動は、今や個人がひょんなことから突然007となってしまい、権力者と同じように世界中に簡単に情報をばらまける時代がやってきている。国家としては、そんなに簡単に機密情報が広まってしまってはたまらない。この法律の出発点は、そんなところだろう。

 米国とソ連(ソビエト連邦)の冷戦が終結し、何百年もの間、血で血を洗う紛争を繰り返してきた欧州でさえ、殺し合いにはさすがに疲れ果ててEUを設立した。人々は、憎しみを抱えながらも国家間の対立を避けようと努力を重ねてきたのである。それにもかかわらず、いまだに国家間の争いを展開しようとする東シナ海周辺の我が国を含む政治的未成熟国家群は、20世紀の再来かと思わせるような国民的興奮を武器に権力の保全を図り、世界で最も危険性の高い紛争地域を形成しようとしている。だから、なおさら、それ急げというわけだったのかもしれない。

 東シナ海周辺に関わる権力者の皆様には、相手が悪いなどと、自国の責任を棚上げにして他国へ責任を押し付けるばかりの幼稚園児のような政治から早急に脱却し、なんとしてでも対話を繰り返して、兵士を含む国民の流血を避ける努力を続けていただきたい。先日亡くなった南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ氏の功績を見れば、対話と協調以外に人類に平和をもたらす道がないことは明らかである。

 政治の仕事は、人々を幸せにするためにある。国家の幸せだけを考えた時に、お互いが不幸になることは過去の歴史が明らかにしている。そして戦争があろうがなかろうが、人々は結局のところ大きな自然の流れに逆らうことはできない。人間という存在はあまりにも小さい。そのことを肝に銘じてほしい。