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 2014年2月8日、日本列島を大雪が襲った。東京都23区の積雪は27cmとなり、1969年の30cm以来45年ぶりの大雪だという。そんな中、東京都選挙管理委員会は都知事選挙への投票を呼びかけていた。今回の選挙はスキャンダルがらみでわずか1年の交代劇だったから、都民は政治にうんざりしている。そこにもってきての大雪であれば、46.14%という低投票率は当然の結果であろう。

 雪に慣れていないうえに、多忙な東京の人々に、事故や転倒の危険を冒してまでも投票所へ行けというのは酷な話である。候補者でさえ75歳以上の後期高齢者が目立ち、すべての人がケータイやスマホを利用する高度情報化が進展した昨今、紙切れにたった1人の名前を書くために、わざわざ投票所に出かけることに抵抗のない人は少ない。

 ネット投票は、なりすましの危険があるというが、投票所ならなりすましはないと断言できるのだろうか? 投票所でのなりすまし対策は、住民が持参した投票券を役所の職員が形式的にチェックし、選挙人名簿登載の有無を確認するだけである。実際に投票所の事務を担当すればよく分かるが、人間というのは外見で判断することはできないし、本人かどうかどころか性別でさえ判断できないこともある。むしろ、現在のやり方は、なりすましが無いというよりも、なりすましが発覚しにくい方法と考えた方がよいくらいである。

 また、ネット投票は、サーバーへの攻撃や不正侵入の恐れがあり危険だという。だが、本当に投票所や開票所で不正や妨害が行われる危険はないと言えるのだろうか? 投票所であっても、不正をすることも、選挙妨害をすることも、そこに悪意があれば防ぐことは難しいだろう。安全策と同時に、厳しい罰則を定めるなど法をもって対処するのは、ネットも、投票所も同じである。

 政府も国会も、番号制度の導入を決め、電子申請だってさまざまな分野で進めている。住民票だって、印鑑証明だって、住基カードがあればコンビニで交付される。税金だってネットで申告できる。調達だって、入札だってネットでできる。本人認証の手段も、暗号化の技術も、端末も、年々高度化している。そして誰もが、ネットで買物し、ネットバンキングを利用する。そんな時代においても、なお、安全性が低いなどとネット投票を避けているのは明らかにおかしい。

 国や自治体が、政策を立案するための根拠として利用するアンケート調査は、不平等、不公平などとは考えずに平然とネットを利用しているし、パブリックコメントだってネットから受け付けている。それにもかかわらず、ネット投票を全く信用できないものとする理由はほとんどない。行政サービスの申請書に100円ショップで買える認印を押して郵送するだけで、さまざまなサービスが提供されていることの方がよほど安全性は低い。