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ネット投票ならはるかにコストを抑えられる

 安全面に加えて、選挙には莫大なコストがかかる。

 最近、軽々しく「信を問う」「辞職する」などと口にする政治家が多くなった。1回の選挙にかかるコストは、予算額ベースで、衆議院、参議院の国政選挙で1回500億~600億円程度、都知事選挙で50億円程度、250万人程度の政令市で地方選挙を行えば、議員、市長それぞれに5億~6億円もの経費がかかる。

 東京都の場合、この10年間で実施された選挙は、ざっと数えても、衆議院総選挙3回、参議院通常選挙4回、東京都知事選挙3回、同議会議員選挙3回、市区町村長と同議会議員選挙で各自治体は少なくとも3回は選挙を実施している。辞職や解散があればさらにこの回数は増える。

 選挙費用を国政選挙1回当たり550億円、都道府県知事・議員選挙を25億円として、ざっと計算すると10年間で、550億円×7回+25億円×6回×47都道府県=1兆900億円もの莫大な費用が使われたことになる。もちろん、これに全国で1719団体にも及ぶ市町村の選挙が加わるから選挙費用はさらに増える。ネット投票ならはるかにコストを抑えられることは明白である。

 無駄をなくすと叫びながら、辞職して大金を使うのでは元も子もない。生活に密着する予算を削減するには、それが数億円であっても苦しい仕事だ。「信を問う」なら選挙以外にも方法はあるだろう。そもそも信任を得て公選されたのである。ひとたび公選で選ばれた人は、「辞職する」などと安易に口にするような甘い責任感のもとで仕事をしてもらっては困る。辞職すれば責任を全うしたなどと考えるのは、江戸時代の武士だけにしてほしい。ましてや、政治は素人だったなどと反省するくらいなら、公職選挙に立候補すべきでない。

 選挙というこの莫大な民主主義のコストのうち、わずかな額を振り向ければ、一定の安全性を確保したネット投票を実現することは難しくないだろう。何より、過去の均質な生活スタイルに比べれば、途方もなく多様な生活スタイルが選択できる現代である。個人の行動様式に合わせた投票機会を拡大することにネット投票は大いに貢献するはずだ。