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 シリコンバレーに来て驚く風景の1つが、「モフェットフィールド」である。

 サンフランシスコ空港からサンノゼ方面に向かって国道101号線を南下し、40分ほど走ったところで左手に見えてくる広大な土地のことだ。1930年代初頭にアメリカ海軍の飛行場として利用され、今でも2本の滑走路が残っている。第2次世界大戦後には、海軍の配備再調整に伴って転用が進み、現在はNASA(米航空宇宙局)エームズ・リサーチセンターの拠点となっている。一部の土地や建物はロッキード・マーティンなどの民間企業にも貸し出されてきた。

 このモフェットフィールドに立っている「ハンガー」と呼ばれる巨大な格納庫の姿は、日本人にとって、今まで見たこともないようなものだと思う。モフェットフィールドには3つの格納庫があるのだが、何と言っても威厳があるのは最古の「ハンガー・ワン(Hangar 1)」だ。

米シリコンバレー・モフェットフィールドの「ハンガー・ワン」の外観(出典:NASA)
米シリコンバレー・モフェットフィールドの「ハンガー・ワン」の外観(出典:NASA)
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ハンガー・ワンの内部(出典:NASA)
ハンガー・ワンの内部(出典:NASA)
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NASAがグーグルの再開発案を承認

 そのハンガー・ワンを、何とグーグルが使うことになるのだそうだ。

 かつて飛行船を格納したハンガー・ワンは、長さ343m、幅93m、高さ60m。これで3万2000平方メートルの地面をカバーしている。この巨大さと流線型をした外観は、この辺りを車で走る際に目を向けずにはいられない。この国のスケールの大きさや、底力のある技術力のようなものがそこに込められていて、一種のリマインダーとして、どうしても見ておこうという気になるのだ。

 先だって明らかになったところによると、グーグルはモフェットフィールドの再開発計画提案が認められ、NASAとのリース契約の下、ここに先端的な研究開発の拠点を設ける予定だという。宇宙探索、航空技術、ロボット関連の研究開発がここで進められる。

 「シリコンバレーのアイコン」とも呼ばれるハンガー・ワンがグーグルによって占拠されるのは、当然のなりゆきのようにも思える。こんな建物が使えるとは、グーグルのイメージにとってかなりラッキーなことだ。だが一方で、これまで国がやってきたことを、だんだんグーグルのような巨大民間企業がやるようになるのだという、複雑で不思議な感覚も捨てきれない。