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 10年前と比べて、世界は変わったでしょうか? 見た目には、世界はどこも変わっていないように見えます。筆者が子供の頃に読んだ本では、21世紀には車は空を飛んでいて、街中にはロボットが歩き回り、月に観光旅行に行けると書いてありました。しかし、車は、相変わらず地面の上を走っていて、ロボットは家事をしてくれないし、月への観光旅行はもう少しかかりそうな感じです。そういう意味では、世界は、ほとんど変わっていないように見えます。

 かつて、日本でiモードが普及したとき、電車に乗ると、向かいの席に座った人達の大半が携帯電話を操作していました。2000年台の最初の頃の話です。ところが、海外、特にアメリカでは、街中にいるとき、携帯電話で通話している人はいても、携帯電話を操作しているだけの人はほとんどいませんでした。たまにいると、それはBlackBerryのユーザーでした。

 ところが2007年に米国でiPhoneが発売されると、米国でも、電車の中でこれを操作してWebを見ている人をみかけるようになり、現在では、日本と同じく、米国でも街中でスマートフォンを「見ている」人が増えてきました。もっとも、治安のよくないところでは、スマートフォンを見て歩いていると、いきなりスマートフォンを奪われたりすることもあるようなので、場所にもよると思います。

 EU圏では、SMSが1990年台から普及していたため、携帯電話を「操作している」人は皆無ではありませんでした。やはり2000年台の始めあたりから、アプリが組み込まれたSymbianのスマートフォンが登場し、これらを使うユーザーが増えてきました。2002年に筆者がSymbianの開発者向け会議に行ったときには、多くのユーザーがノキアの9000シリーズ(一見大きな携帯電話だが開くと液晶とフルキーがある)を使っていました。ですが、現在のように街中でモバイルデバイスを広く使うようになったのは、iPhoneなどのスマートフォンの普及後でした。

 つまり、スマートフォンの普及は、人々の街中でのあり方を変えてしまったといえるでしょう。それまでは、地図といえば紙の地図で、歩きながらのナビゲーションなどは不可能でした。また、メールは、自宅やネットカフェなどで見る物で、ノートPCに携帯電話を接続して見るのは、ごく一部の限られた人だけでした。

 ところが、いまや、世界中で、街中でメールを読んだり、地図を見たり、SNSに投稿することが日常的に行われています。もっとも、筆者は、アフリカや中東には行ったことがないので、見たことはありませんが、おそらく、状況は同じだろうと思われます。

 実際、米国の事業者であるAT&Tのデータ通信による収入が、音声通話による収入を上回ったのは、iPhoneが登場したあとでした。日本では、iモードなどにより、2000年台の前半には、データ通信による収入が大きくなっていましたが、世界中でみると、携帯電話のネットワークでデータ通信の扱い量が増えたのは、スマートフォンの普及以後です。もっとも、携帯電話業界では、1990年台頃には、音声通話による収入は頭打ちで、データ通信による収入を増やさないと、競争で音声通話料金を下げるしかなくなって、ビジネスが苦しくなるとの考えはあったようですが、2G世代では、各国ともに、日本のiモードや、着メロ(ダウンロードがデータ通信)といったキラーアプリを見つけることはできなかったのです。

 ですが、スマートフォンの登場で、ある意味、インターネットそのものがキラーアプリになりました。Webやメール、インターネット上にあるSNSなどのさまざまなサービスをスマートフォンからアクセスできるのです。ただし、スマートフォンの場合、プロセッサの能力がさほど高くないことから、HTMLとJavaScriptを使うWebページによる「サービス」をブラウザで閲覧するのではなく、専用アプリを使いますが、アクセスするサービスは、PCのWebブラウザで見ているものと同じサービスです。実際、Webブラウザは、パソコンで最も負荷の重いアプリの1つになっており、スマートフォンに比べて高い性能を持つPCだからこそ、効率があまりよくないWebページでサービスを利用できるのです。